2026.07.03
宮本義昭氏コラム
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第18回
エネルギー生産性向上 移動機械(自動車、フォークリフト、など)の維持管理費用削減①EV
はじめに:
ホルムズ海峡問題をはじめ、エネルギーを取り巻く情勢は依然として先行きが不透明です。こう状況を踏まえ、今回もエネルギー関係の第3弾を取り上げます。
今回取り上げるのは移動機械、つまり、自動車やフォークリフトなどの機械の維持管理コスト削減に関して、となります。
日本政府によるガソリン高騰の激変緩和策により、あまり実感がわかない状況ではありますが、世界ではガソリンをはじめとした化石燃料製品の高騰で大変なことになっています。日本政府でも現在のガソリン補助金を現在の水準で維持するのは現実的ではないというコメントも出始め、今後、米国とイランの交渉がまとまらなければ日本でも化石燃料製品のコスト増は避けられないでしょう。
そこで対応策として考えられるのがEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)への転換でしょう。今回は電気自動車について取り上げます。
世界で広がるEV:
よく日本では電気自動車は頭打ち、ガソリン車やHV(ハイブリッド車)への回帰、などというフェイクニュースがよく流れていますが、全く事実は異なります。

(出典)Marklines、上記カッコ内は2025年の数字)
このグラフの通り、EVやPHEVは大きく伸びており、むしろ、頭打ちなのはHEVなのです。
では、なぜ日本のマスコミは「EV頭打ち、HEV見直されている」という偏向報道をしているのでしょうか?多くの広告費を日本の自動車メーカーからもらっているということもあるでしょうが、下記グラフの様に大国米国だけが世界とは異なる自動車販売台数となっています。

(出典)Marklines、上記カッコ内は2025年の数字)
このように日本のマスコミは米国=世界と置換して報道していることがわかります。
では、米国=世界という捉え方は正しいのでしょうか?
下記が自動車産業の地域別のマーケット規模です。全世界で年間9500万台の自動車が販売されていますが、米国はその20%程度しかシェアは無く、米国=世界という捉え方はかなり乱暴であり、今後、米国以外の国々の経済発展を考えれば米国のシェアはますます低下するでしょう。
このようなEVは頭打ち、のような偏向報道は日本の長期的な戦略を誤った方向に導く極めて危険なものだと私は考えます。
米国でさえ、2000年頃にトヨタの初代プリウスが発売された時には米国の富豪やセレブが環境にやさしい車といってプリウスがたくさん売れました。今は電気自動車のテスラにこの座を明け渡してしまっています。
電気自動車は日本の日産が世界初の量産型EVとしてリーフを販売しました。充電規格も日本方式を普及させようとしていましたが、もはや中国や米国、韓国企業に後塵を拝する状況です。いつもの技術で先行し、ビジネスで負けるというパターンの繰り返しです。

(出典)Marklines
何故、世界でこんなにEVが売れていて、かつ、伸びているのでしょうか?それは先進国以外、石油をはじめとした化石燃料は高くて買えない、外貨を稼ぐ手段が乏しく買えない、といった国々が少なくありません。
例えば、エチオピアではEV以外の自動車の製造、販売を禁止することを検討している国もあるくらいです。この結果、化石燃料に全く依存しない国は発展途上国中心に既に6ヶ国もあるそうです。今後、今回のホルムズ海峡封鎖により、脱化石燃料は地球温暖化対策ではなく、経済的な理由で推進されていくこととなるでしょう。
今後のEV、蓄電池、太陽光発電は大きなシェアを持っているのは中国です。米国はイランへの武力行使→ホルムズ海峡封鎖を通じて、敵対視している中国に大きな利を与えてしまったといえます。少なくても長期的には中国の得た利益は莫大なものとなるでしょう。
どんなEVを選択すべきか?:
私も現在、EV購入を検討し始めましたが、どんなEVを選択するか難しいところです。以前も蓄電池のご紹介の時に触れましたが、リチウムイオン電池は発火のリスクがあり、基本的には発火を前提に考えるべきと申しました。ところが、定置型電池はともかく、自動車へ搭載する電池がこれではとても怖くて購入できません。
では、どんなメーカーのEVも危険かというとそうではありません。弊社調べでは日本メーカーのEVで電池起因の車両火災は起きたことが無く、やはり、第一選択肢としては日本メーカー製をお薦めしますし、私も選択するでしょう。
また、今後物理的に火災が発生しにくい電池の販売が予定されています。中国CATLのナトリウムイオン電池は既に製品化され、一部のEVへの搭載が始まっています。今後は日本メーカーが主導する全固体電池に期待ですが、なかなか製品化されません。日本の自動車メーカー勢がEVで出遅れた要因の一つがこの全固体電池への過度な期待があったとする専門家も多いです。
リチウムイオン電池は正極と負極のリチウムが電解質に溶解して、充電や放電時に行ったり来たりするのですが正極も負極も電解質も固体なのにリチウムが溶けてしまうということは正極と電解質、負極と電解質の間に空隙ができてしまい、性能が下がるのでは?と素人考えですが実現可能性に大きな疑問を投げかけます。
しかしながら、日本の大手自動車メーカーが社運を賭けて取り組まれているので期待して待ちましょう。
ということで当面は日本メーカーのEVが良さそうですし、私もその範囲内で選択したいと思っています。今後CATL製のナトリウムイオン電池搭載車が日本でも発売されたらそちらも選択肢の一つにするのが良いかと思います。ナトリウムはリチウムと比較してどこにでもある安価な物質です。更に火災の心配もかなり少ないのが特徴です。今後ナトリウムイオン電池が車載電池としては最良の選択肢になる可能性も否めません。

(出典)日産ホームページより、世界初の量産型EV、車載電池起因の車両火災は未だに報告されていない(弊社調べ)

CATLのナトリウムイオン電池、画像は初代のもの
EV活用のおもしろい事例
EV活用のおもしろい事例があります。
これは実際に存在する企業の事例で、採用コスト削減、燃料費削減、自動車の維持管理費削減、交通手当削減、など大きな効果を出された企業の事例です。
一番ユニークなのは人材採用にEVを活用したということです。これは都会では難しい施策ではありますが、「弊社に入社して頂ければ日産リーフを無償貸与」というものです。会社に入れば日本製EVがもらえると、一時大変話題になりました。
毎年佐賀県の人口と同レベルの規模で人口が消滅する日本において、年々採用難易度は増えるばかりです。採用ツールとしてEVを活用された面白い事例です。採用競合に打ち勝つということだけでなく、採用コストの削減にも成功したそうです。また、地元における環境に配慮した企業としても多くのメディアに取り上げられ、企業や採用ブランド確立という観点でも大きな効果があったと思われます。
更にこの企業は燃料費を安く抑える為に、駐車場に太陽光パネルと充電器を設置し、EVへの充電や事業所内電気の活用において燃料費や電気代を大幅に削減して効果を上げられました。また社用車としても使いますから社用車の燃料代削減にも貢献しています。
毎月支給していた交通手当はこのEV無償貸与により、無くしましたので、交通手当削減効果もあるでしょう。
日本ではまだまだ小規模事業所や家庭用蓄電池は効果ですが、昼間に駐車場にEVが何台かあれば余剰電力はEVが吸収してくれます。また、V2Hを導入すれば停電時や電気が不足する時もEVから電気を取り出すことが可能になります。
V2Hとは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)のバッテリーに蓄えられた電気を家へ供給する技術です。通常、EVは充電した電気をモーターでの走行のために使いますが、V2Hではその電気を家に供給することが可能になります。V2Hは英語表記の「Vehicle to Home」の略号で、「車(Vehicle)から家(Home)へ電気を供給する」ことを指します。
この技術によって、家のエネルギーマネジメントの幅が広がり、停電時の非常用電源としての活用、電力コストの削減、再生可能エネルギーの有効活用が実現できます。特に、災害時のライフライン確保や、エネルギー価格高騰時の対策として、近年注目が高まっています。
こうした施策によってこの企業はEVの導入コストとコスト削減効果はトントンになったようです。これに加えて企業や採用ブランド価値向上に貢献したことを考えれば経済的にはプラスになったでしょうし、今後、炭素税の値上げや大手企業からの二酸化炭素削減の依頼にも対応できますので価値向上施策としては十分すぎる効果をもたらすことになったのではないでしょうか?
最後に:
今回は脱化石燃料といえば最も身近なEVについて取り上げてみました。
日本ではEVがなかなか普及しないので当然活用も進んではいないのですが、EV活用のおもしろい事例がありましたので今回ご紹介させて頂きました。
都会では難しいですが地方や駐車場や空地がある事業所、隣接地に空地や農地があり、太陽光発電の電力供給を協力してくれる地主さんがいるところでは極めて効果の高い事例が作れると思っています。
今後、ガソリン代をはじめとした化石燃料は大きく値上がりするかもしれません。ホルムズ海峡で化石燃料依存の危うさが世界に伝わりましたが、逆を考える国もあると思います。
例えば台湾海峡封鎖です。この時は化石燃料だけでなく日本の輸出入に大きなインパクトを与えることになるので戦略カードとして、今後の某国との交渉はますます難しくなると考えておいた方がよいでしょう。
EV活用は自社の利益に貢献するだけでなく、貿易収支の改善、円安抑止、地方創生(海外に流れている化石燃料マネーを奪還)、外交不利益の回避、など多くの便益があります。
以上、ご関心あれば下記までご連絡下さい。企業や団体の紹介も可能です。
宮本義昭:メールアドレス:ym00876216@gmail.com
(過去のコラム)
第1回:人手不足対策、地域の空き家問題対策、リフォーム事業拡大
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第1回 – 日本木材青壮年団体連合会
・海外人材紹介と定着サービス:フューチャーデザインラボ社のご紹介
第2回:少子化問題と木材産業の成長
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第2回 – 日本木材青壮年団体連合会
・中堅中小企業の売上利益拡大を支援:Revitalize社のご紹介
第3回:リプレイス大作戦その1~石炭の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第3回 – 日本木材青壮年団体連合会
・林業コンサルティング会社:KOSO社のご紹介
第4回:リプレイス大作戦その2~外材の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第4回 – 日本木材青壮年団体連合会
第5回:リプレイス大作戦その3~天然ガスと石油の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第5回 – 日本木材青壮年団体連合会
第6回:リプレイス大作戦その4~外材、化石燃料以外の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第6回 – 日本木材青壮年団体連合会
第7回:生産性向上~林業 育林コストの大幅な削減
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第7回 – 日本木材青壮年団体連合会
第8回:生産性向上~林業 森林所有権の集約
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第8回 – 日本木材青壮年団体連合会
第9回:生産性向上~林業 10年後のあるべき森林管理をめざして
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第9回 – 日本木材青壮年団体連合会
第10回:生産性向上~林業 10年後の素材生産
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第10回 – 日本木材青壮年団体連合会
第11回:生産性向上~木質資源のエネルギー活用
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第11回 – 日本木材青壮年団体連合会
第12回:生産性向上~NPO法人 蔵前バイオエネルギーの取組
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第12回 – 日本木材青壮年団体連合会
第13回:生産性向上~自社へのAI導入:CosBE社
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第13回 – 日本木材青壮年団体連合会
第14回:生産性向上~機械学習データ作成:Nextemer社
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第14回 – 日本木材青壮年団体連合会
第15回:生産性向上~スリープテック:株式会社ACCELStars(アクセルスターズ)
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第15回 – 日本木材青壮年団体連合会
第16回:エネルギー生産性向上と事業拡大 太陽光発電と蓄電池
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第16回 – 日本木材青壮年団体連合会
第17回:エネルギー生産性向上 フローティング電池を活用した電気代削減と事業拡大
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第17回 – 日本木材青壮年団体連合会
(所属企業、団体)
株式会社バルステクノロジー 代表取締役社長
兼 株式会社KOSO アドバイザー
兼 日本木材青壮年団体連合会 広報委員会アドバイザー
兼 株式会社Revitalize アドバイザー
兼 株式会社Dione アドバイザー
東京科学大学(旧東京工業大学)基金特別会員
東京科学大学(旧東京工業大学)起業創業コミュニティ
プラチナ構想ネットワーク 法人会員
先進EP研究会 会員
Asagiラボ 賛助会員
東海バイオコミュニティ 法人会員
林野庁 森ハブ・プラットフォーム会員
東京丸の内イノベーションプラットフォーム林業分科会
蔵前バイオエネルギー 正会員
ソーラーシェアリング推進連盟 一般会員
(スタートアップ企業支援)
①フューチャーデザインラボ:海外人材紹介と定着
②クラフトバンク:職人さんDX
③アクセルスターズ:スリープテック
④Nextremer:AI機械学習データ作成
⑤CosBE:AIプロトタイピング
⑥Dione:プログラムコード作成自動化、プラットフォーム開発(Adviser)
⑦KOSO:林業コンサル、補助金に頼らない林業へ(Adviser)
⑧Revitalize:BPN(ビジネスプロデューサーネットワーク)(Investor)
⑨Interboro:ロボット稲作(Investor)
⑩YD-Plants:高麗人参自給率1%→X%へ(Investor)
⑪プラントフォーム:アクアポニックス、食料自給率向上(Investor)
⑫ESSH:廃棄物無害化、循環型経済(Investor)
⑬SORENA:廃棄リンゴからレザーを製造(Investor)
⑭Red Yellow And Green:プラントベース・環境配慮型厨房OX(Investor)
⑮Egregium:ロボアド2.0(Investor)
⑯Blueprint one:余剰脱脂粉乳のアップサイクル(Investor)
⑰堤水素研究所:世界最高効率の蓄電池、燃料電池、水電解装置製造(Investor)
⑱ZetaX社:リザバーコンピューティング
⑲SYNRA社:画像から静機械振動を抽出、計測、稼働監視、異常検知
⑳レッツ社:丸太のまま燃やせるボイラー
21.スペースワスプ社:植物廃棄物や木材から樹脂抽出し、独自開発の3Dプリンターで建材や家具を自動製造
(拙著:代表作)
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