2025.11.18
宮本義昭氏コラム
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第9回
生産性向上~林業 10年後のあるべき森林管理をめざして
はじめに
林業施業に当たって、最初に行うのが森林の状況把握でしょう。現地の調査、林道、林業専用道、作業道、など道の把握や開設計画、樹種や樹齢の把握、など様々な情報を集めて計画を立てなくてはいけません。
更に現状はほとんど行われていないと思われますが、過去の林業や道の施業履歴の把握も本来は必要でしょう。
スマート林業とよくいわれるようになってから、ドローンや資源量把握技術は使われるようになってきましたが、省庁毎(林野庁、国土交通省、法務局)、都道府県毎、市町村毎、施業毎事業者毎に行うのはあまり効率的ではないですし、森林所有者情報、森林境界、施業地森林、樹種、樹齢、林業や道の施業履歴、森林資源、など様々な情報が分散していては、なかなか効率は上がらないでしょう。
また、昨今は杉や檜以外の樹種の栽培の実験をされている事業者さんも増えてきました。そうした場合にそもそも何が施業森林の適した樹種なのか、対象となる樹種は育成可能なのか、事前にわかれば新しい樹種の導入もスムーズになります。
都道府県や林野庁では航空レーザーデータのOPEN化に取り組んでいるものの都道府県で取組に差がありますし、様々な企業も関与しており非常にわかりにくくなっています。
今回は現在の技術や森林クラウド、森林資源情報管理技術を俯瞰した上で、10年後のあるべき森林管理、森林管理のシステムを考えてみたいと思います。
リモートセンシングと自動化
リモートセンシングは、物体に触れずにデータを取得する技術であり、主に人工衛星や航空機を使用して地球の表面を観測する方法です。
① 人工衛星によるリモートセンシングに期待したいこと
人工衛星を活用したリモートセンシングは日本全体の森林情報を低コスト、短時間で取得できることが大きなメリットです。日本全体の森林情報を取得している衛星が現在、何基あるかわかりませんが、技術的には数時間、数日単位でデータ取得は可能であり、データの履歴を把握することで経時変化を捉えることが可能です。
災害発生時の森林や道の状況も把握でき、二次災害の防止や復旧までの期間短縮が期待できます。
経時変化を捉えれば、林業施業の役所と林業事業体の現地調査(例えば、下刈、除伐、間伐、皆伐、など)も机上で可能になるでしょう。
伐採届のマップ情報もデジタル化すれば、違法伐採の検出も可能となり、違法事業者の早期取締り、違法施業の早期停止も可能になるでしょう。
衛星データと気象データを掛け合わせることで樹種の適地栽培が可能になるかもしれません。衛星データから土壌情報を得る事ができ、気象データから温度や風速が得る事ができ、適した樹種、育成可能な樹種を決めることができるでしょう。
気候変動が今後も継続すると思われることから以前は育林不能と思われていた樹種の栽培も可能になるかもしれません。
② 航空レーザーによるリモートセンシングに期待したいこと
航空レーザーを活用した森林資源量の把握は既に実用化されており、アジア航測株式会社では、正確な森林資源情報の提供サービス、効率的な伐採計画~出材量の算出サービス、森林資源情報を駆使した境界明確化サービス、安全な作業道確保のための路網計画サービス、森林資源情報の総合支援クラウドシステム、などが提供されています。
しかしながら、こうしたサービスは施業毎や市町村毎や都道府県毎に個別に不定期で行われており、毎年、日本全体を一律で航空レーザー測量してしまえば、全体のコストを削減し、林業現場や役所の負担も大きく下がります。
こうしたサービスがクラウドで提供できれば、現地調査の手間は大幅に削減可能になります。そして、これらのサービスによる提供データと林業機械の連携ができれば、将来の林業の自動化や遠隔操作が可能になるでしょう。
例えば、路網計画をクラウドで行い、そのデータを路網開設林業機械(今後のコラムに掲載予定ですが、バケットとハーベスターのダブルアームの林業機械)に読み込ませれば路網開設が自動化できるでしょう。
クラウドにおける情報の一元管理
森林所有者情報、森林境界・地籍情報、施業履歴、森林経営計画、Jクレジット、森林簿、・・・などの情報をクラウドで一元管理することで大幅な林業事務の削減が可能になります。
林業事業体にとっては、森林所有者や連絡先を探したり、境界確認をしたり、森林所有者に意思確認したりするのが大きな手間になっているのは前回のコラムに掲載したとおりです。
クラウドでこうした情報を一元管理できれば林業事業体の事務コストの大幅な削減が可能になります。
オンラインで森林経営計画や伐採届、など林業事業体と森林所有者で共有できれば森林所有者にとってもオンライン図面と計画を容易に確認ができ、手間が大幅に削減できるでしょう。どうしてもオフラインで確認したい場合は、承認ボタンの横に「説明して欲しい」ボタンを付けておけば、説明が必要な森林所有者にのみ説明に行けばよいのです。
また、森林所有者の森林の遺産相続でも確認や検索が容易になり、相続人になる森林所有者は相続の手間も削減できます。森林資源の経済的な価値もわかれば放置森林も減るでしょうし、相続した森林への関心が高まることでしょう。
林業機械、木材運搬トラック、木材コンビナートの仕分けシステムとデータ連携できれば、どの森林所有者の木材か判定も可能となり、精算事務も自動化できるでしょう。
森林の所有者情報を越えて
森林だけでなく、日本の土地の管理は杜撰といっても過言ではありません。所有者不明土地は住宅地、農地でも発生しています。日本全体で住民票データ、戸籍データ、土地の登記データを一元管理し、誰の土地なのか役所、法務局、農業委員会、林業事業体がわかるようにしなければ様々な支障が出続けるでしょう。森林の豊かな地域は過疎化が大幅に進展しており、こうした支障は林業、農業、不動産業などの産業、災害復旧、・・・などの大きな足枷になります。
実際に私も市長から災害時の土地所有者がわからず、なかなか災害復旧工事に着手できなかったと聞いていますし、千葉県の令和元年台風第15号(房総半島台風)で発生した大量の倒木の有効活用の為にJERA(東京電力と中部電力の火力発電部門が統合した世界最大の火力発電企業)で火力発電燃料に使用する事を検討はしたものの木材の森林所有者探しに相当な時間と労力がかかりそうだということで断念したと聞いています。
個人情報保護の観点から情報のフルオープンは不可能ですが、機能を制限するとか、データの扱いに関しては国家資格を設定するなどして限定された人には情報開示ができるようにしてはどうでしょうか?
まず、機能制限の観点ですが、個人番号(マイナンバー)とマイナンバー用の暗証コードを入力すると自分が保有する土地の一覧が表示される機能は本人しか使えないように機能制限することが必要でしょう。
土地、または、マップ情報から所有者と連絡先がわかる機能に関してはデータ扱いに関する国家資格所有者、かつ、役所や林業事業者、農業委員会に勤務している人、もしくは、それに準ずる人のみ機能利用ができるようにすればよいのです。
違法伐採検知は前述しましたが、それ以外にも違法建築、違法な土地転用、離島などの違法占拠、国土の管理という観点で情報のデジタル管理、違法検知をすべきではないでしょうか?
国家レベルでは防衛省、国土交通省、農林水産省、林野庁、などの協力の下でプロジェクトを形成して推進する必要があります。そもそも登記情報が最新で参照可能なら林野庁がこの問題に振り回されるのは本来の仕事ではありませんから、そこに割いている労力は本来の林業政策に使って欲しいものです。
衛星データや航空レーザーデータなどの取得は国が一括で行う事で都道府県や市町村、事業者単位の負荷を無くし、マップ情報管理のクラウドシステムも国が一括で提供する事を提案します。
また、データの更新頻度は衛星データに関しては既存の人工衛星から取得しているデータをフル活用してできれば毎日更新、経時データは変更点のみ保管、航空レーザーデータは年に1回更新がよいのではないかと思います。
気象データや林業で活用する森林簿、経営計画、伐採届、・・・などや本来一元管理すべき森林所有者や地籍データ、現地での災害画像などの現地データ、・・・などはクラウドで一括管理し、衛星、航空レーザーなどのデータと合わせて参照できるようにするのがよいと思います。
最後に
今回は森林管理に関してあるべき姿を考えてみました。
私が林業を始めた時に法務局に行って登記簿を取り寄せた時に驚愕しました。ほとんどの森林所有者が明治時代から更新されておらず、この国の森林管理、土地管理の杜撰さに大変驚きました。
結局、現地での聞き込み調査により、大まかな森林所有者情報を得る事はできましたが、ほとんどの森林所有者が他地域に転居しており、境界確定には莫大な手間がかかるということがわかり、林業施業を諦めたことがあります。
私の住んでいる地域では既に消滅した山村集落が多数あり、地籍調査が進まず、過疎化により今後、ますます消滅集落は増加し、森林情報は失われていくことが明らかです。
また、調べる手間も多くかかり、林業施業を諦めざるを得ない森林は手間の観点でも増えていくと思われます。
早く手を打たないと森林は国土の2/3を占めているにも関わらず施業できる森林はほんのわずか、ということになってしまうでしょう。
森林だけでなく土地の管理を強化し、デジタル化しなければ利用不能な土地は森林、農地、住宅地とどんどん波及していきます。
あるべき姿を想定し、バックキャスト思考でこの難題に取り組まなければいけません。
以上、ご関心あれば下記までご連絡下さい。
宮本義昭:メールアドレス:ym00876216@gmail.com
(過去のコラム)
第一回:人手不足対策、地域の空き家問題対策、リフォーム事業拡大
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第1回 – 日本木材青壮年団体連合会
・海外人材紹介と定着サービス:フューチャーデザインラボ社のご紹介
第二回:少子化問題と木材産業の成長
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第2回 – 日本木材青壮年団体連合会
・中堅中小企業の売上利益拡大を支援:Revitalize社のご紹介
第三回:リプレイス大作戦その1~石炭の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第3回 – 日本木材青壮年団体連合会
・林業コンサルティング会社:KOSO社のご紹介
第四回:リプレイス大作戦その2~外材の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第4回 – 日本木材青壮年団体連合会
第五回:リプレイス大作戦その3~天然ガスと石油の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第5回 – 日本木材青壮年団体連合会
第六回:リプレイス大作戦その4~外材、化石燃料以外の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第6回 – 日本木材青壮年団体連合会
第七回:生産性向上~林業 育林コストの大幅な削減
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第7回 – 日本木材青壮年団体連合会
第八回:生産性向上~林業 森林所有権の集約
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第8回 – 日本木材青壮年団体連合会
(所属企業、団体)
株式会社バルステクノロジー 代表取締役社長
兼 株式会社KOSO アドバイザー
兼 日本木材青壮年団体連合会 広報委員会アドバイザー
兼 株式会社Revitalize アドバイザー
兼 株式会社Dione アドバイザー
東京科学大学(旧東京工業大学)基金特別会員
プラチナ構想ネットワーク 法人会員
先進EP研究会 会員
Asagiラボ 賛助会員
東海バイオコミュニティ 法人会員
林野庁 森ハブ・プラットフォーム会員
東京丸の内イノベーションプラットフォーム林業分科会
蔵前バイオエネルギー 正会員



木の未来を
つくる仲間へ
木材に関わる全国の若い経営者たちが集まり、交流・学び・活動を通じて業界の未来をつくっています。あなたも木青連の一員として、全国の仲間とともに木の可能性を広げてみませんか?

