2026.05.13
宮本義昭氏コラム
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第16回
エネルギー生産性向上と事業拡大 太陽光発電と蓄電池
はじめに:
米国がイランに対して引き起した戦争により、ホルムズ海峡は封鎖されてしまいました。いつ終わるのかわかりませんが、世界に大きな悪影響を与えているのは事実です。
木青連会員企業の皆様への影響もかなりあることでしょう。日経新聞電子版でも5/8に下記の様な記事が掲載されました。
「ナフサ高、戸建て工期に遅れ
中小工務店「資材が入らぬ」 価格1割上昇の試算、大手も警戒」

このように多くの資材が高騰しており、経営への影響は甚大だと思われます。
今回からはこの影響を少しでも緩和できる方策は無いか考えてみたいと思います。
この16回目のコラムは「太陽光発電と蓄電池」を活用し、エネルギー生産性を向上させるとともに新しいビジネス機会にできないか考えてみたいと思います。
太陽光発電と蓄電池を活用したエネルギーコスト削減
イギリス・サリー大学の先端技術研究所(ATI)の研究により、太陽光エネルギーが世界で最も安価な電力源になっていることがわかりました。リチウムイオン電池を用いた蓄電システムとの組み合わせは、ガス火力発電所に匹敵するコスト効率だとのことです。
日本の電気代の内訳は「発電コスト」:「送配電コスト」:「電力小売りコスト」はだいたい4:4:2の割合になっています。したがって、自社で発電して、送配電連携せずに自社で使用するのが最も安価となります。
太陽光発電は昼間しか発電しない、天気に左右される、などデメリットはありましたが、太陽光発電パネルや周辺機器、蓄電池の価格が大幅に下がり、蓄電池と組み合わせることでこうしたデメリットは無くなりつつあります。
また、太陽光パネルが重くて、工場の屋根にのせられない、という話しも地元の経営者から聞いたことがありますが、これに関しても従来の太陽光パネルの1/10以下のパネルやフィルム式太陽光パネルならかなり軽量になります。
日本では1970年代の石油ショックの時に「サンシャイン計画」という国家プロジェクトが立ち上がり、太陽光発電は日本のお家芸でした。しかしながら、技術では先行しても普及段階で負けるという日本のいつもの悪いパターンで現在の(シリコン)太陽光パネルは中国製が席巻してしまいました。
ところが、2009年に桐蔭横浜大学・宮坂力(みやさか つとむ)教授の研究チーム(主に大学院生・小島陽広氏ら)が「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を持つ物質が太陽光で発電する事を発見、日本の企業が技術開発し、遂に今年(2026年)、積水化学(積水ソーラー)がフィルム型で薄くて、軽量、曲げられる太陽光フィルムの販売を始めました。
これにより太陽光パネルの重量が問題で導入できなかった屋根への設置が可能となります。
因みにペロブスカイト太陽電池の主原料はヨウ素です。日本はヨウ素の世界最大級の資源保有国、生産国です。資源を持たない日本では珍しく自給できる資源から作られています。貿易赤字が常態化し、円安が進展している日本の救世主になるかもしれない技術、製品かもしれません。
また、経済産業省が音頭を取り、いつものように技術は先行するが普及で負けないように大量導入に向けた施策を国としても取り組んでいます。例えば、屋根瓦一体型太陽光発電屋根や壁一体型太陽光発電壁、窓一体型太陽光発電窓、・・・など建材としての普及を後押ししています。
軽いですから実際の工事の職人さんの負担も大きく減るでしょうし、安価で職人さんの手間が少ない施工方式を様々な企業が提案しています。
このようにペロブスカイト太陽電池は今後、屋根や壁、窓に使われることが多くなるでしょうし、国や都道府県、市町村でも補助金を準備しているようです。
焼け石に水かもしれませんが、皆さんの事業所や工場、不足するなら周囲の空地や農地(ソーラーシェアリング)も活用し、電気の自産自消に取り組んではどうでしょうか?
残る懸念事項は太陽光発電の火災リスクです。何らかの衝撃によるパネルの破損や直流部分の電線の切断などにより火災が発生する事があります。これは太陽光発電が直流で発電することにより、電線切断が発生するとDC(直流)アーク(直流回路で発生する放電現象)が発生、温度は3,000~10,000℃にもなり、これが火災の原因となります。
欧米では、DCアークを検知し、遮断する機器の設置が義務付けられていますが、「いつも遅い国」日本では、そのような規制が無く、こうした機器は設置されていないのが現状です。
そこで、残念ながら中国企業ですが、世界の巨大テクノロジー企業となったHUAWEIが新しく発売するパワーコンディショナー(SUN2000-4.95K-LB0-NH)にはこのDCアークを検知し、0.5秒以内で遮断する機能が追加されました。
どうしても、中国製は抵抗感があるという方は日本のスタートアップ企業であるシグマエナジー社が単体製品として太陽光発電のDC電力を安全に高速で遮断するスイッチ=
太陽光発電安全停止スイッチ(ラピッドシャットダウンシステム)を開発しています。
シグマエナジー社は私の東工大(現在の東京科学大学)の後輩の川口さんという方が代表を務めている会社で、以前から太陽光発電の危険性を訴えておりました。
もし、ご関心ありましたらおつなぎします。木青連でまとめて発注すれば安くなるかもしれません。
このように太陽光発電は蓄電池と組み合わせることで発電の不安定性を克服し、ペロブスカイト太陽光発電フィルムが積水化学から発売されたことにより薄くて軽量、曲げられることから設置可能場所が大幅に拡大しそうです。更に安全性も中国や日本企業により高められてきています。もう太陽光発電+蓄電池を導入しない理由は無いのではないでしょうか?
蓄電池に関しても安全性の面で、やはり、HUAWEIの蓄電池が良いとは思いますし、日本のスタートアップ企業であるPower-X社も中核部品は海外に依存していると思われます。HUAWEIの蓄電池は火災の安全対策を2重で行ってはいますが、現在の主流であるリチウムイオン電池は火災を起こすという前提で、設置場所や延焼防止対策を施すべきでしょう。
私もペロブスカイト太陽電池+蓄電池の自宅兼事務所への導入(屋根と壁の一部)を検討していますが、パワーコンディショナーと蓄電池は火災を起こす前提で自宅の改修を考えています。
発電と蓄電がこのように新しい技術により現実的な価格で購入できるようになりました。あと考慮すべきは事務所や工場のオール電化をどのように進めるかですが、ほとんどの設備は現在の技術では電化製品にリプレイス可能です。
熱関係の設備であれば下記ホームページがお役に立ちます。
太陽光発電と蓄電池を活用した事業拡大
木青連の会員企業様の中には住宅建築や商業施設の建築事業をされている企業様も多くおられると聞いています。
まずは自社で太陽光発電+蓄電池を導入し、そこで得られた知見、ノウハウを元に既存のお客様や新規のお客様にご提案してはどうでしょうか?
皆様のお客様も今回のホルムズ海峡封鎖により、ご心配されている方や実際に損害に合った方、など多数いらっしゃると思います。
建材一体型の太陽光発電関連製品はBIPVといいます。ネットで検索すると国内外多数の企業が様々な製品を出されています。
参考①:Panasonicのガラス一体型製品

上図のように様々なデザインを印刷するように製造することが可能となっています。
窓だけでなく、外壁にも使えないか実証実験を行っています。
参考②;AGCのガラス一体型製品

窓だけでなく、屋根にも採用されている。
参考③:カネカの屋根瓦一体型製品

ところで、お客様にご提案する時にまだ考慮することがあります。実は日本の基礎自治体の51%は豪雪地帯です。何と半数以上の地域が豪雪地帯というのが日本なのです。
そこで日本国内では融雪機能付きの太陽光パネルを製造販売している企業があります。また、私の家は岐阜県の飛騨地方という大豪雪地帯ですので、融雪機能付きの太陽光パネルの導入を検討しています。私の家の屋根はフッ素加工した屋根材ですので屋根の雪下ろしは不要ですが、屋根から落ちてきた雪の始末が極めて大変で、大雪の際には1日4回も除雪しないと家庭用除雪ロータリーではにっちもさっちもいかなくなってしまいます。
今のところ、ペロブスカイト太陽電池の融雪機能付きパネルは無いのですが、積水化学の開発ヘッドの森田さん(積水ソーラーフィルム株式会社の取締役 技術・開発部長の森田健晴様)には作ってもらえないか打診はしています。
シリコン型の旧来の太陽電池に関しては日本の長州産業という企業が「ほっとパネル」という製品名で製造販売しています。長州産業株式会社 太陽光発電・蓄電システム
毎年、屋根の雪下ろしの最中の事故や屋根から落ちてきた雪に接触する事故があります。雪の問題を含めてご提案できるといいですね。
太陽光発電と蓄電池の未来
日本は多くのエネルギーを海外から輸入しており、その金額は化石燃料とその製品を合わせると35兆円(2022年度財務統計から弊社でピックアップして合計した数字、例えば韓国から輸入している炭酸ガスは化石燃料由来、メタノールは100%化石燃料由来、と仮定しています)にもなります。
シリコン型太陽電池では中国に負けてしまいましたが、日本には薄くて軽くて曲げられるペロブスカイト太陽電池があります。しかも原料のヨウ素は自給可能です。
私が日本政府で勤めていたら、ペロブスカイト太陽電池と蓄電池に全集中し、今度こそ他国に負けない政策を実現すると思います。
今回は建材としての太陽光発電製品のご紹介が主ですが、建材に100%使えれば日本国内のエネルギー需要の6割をまかなえるという試算があります。
更に建材だけでなく、大量導入できる余地はたくさんあると思います。
私も積水化学などのペロブスカイト太陽電池メーカーに「チマチマやっていると他国に負けるので、建材だけでなく、もっと大量に導入する事を考えて欲しい」と言っています。
例えば、地方だと中核都市から放射線状に基幹道路が伸びており、住宅やオフィス街を抜けると農村集落が点々としており、更に行くと山村集落が点在している、というのが地方の構造でしょう。農村や山村集落の間の電柱は周りに何も無いことが多く、この電柱に架線を張って、垂直に太陽光フィルムをぶら下げるという施工方法はどうでしょうか?私はこれを架線設置型施工方式といって、太陽電池メーカーにお薦めしていますが、ポテンシャルはかなり高いと思います。
既設の電柱だけでなく、例えば、堤防沿いに新たに電柱を立ててもいいですし、川の上に設置してもいいでしょう

岐阜県垂井町の川の両岸に支柱を立てて架線を張って鯉のぼりをぶら下げている風景
また、水力発電所のダム湖の周囲の道脇に支柱を立ててもいいかもしれません。

現在、農地の上に太陽光パネルを設置するソーラーシェアリングが普及し始めていますが、設置する為に農地に多くの支柱を立てる必要があり、しかも、この支柱を立てる部分のみ農地一時転用許可を農業委員会から得ないといけません。
架線設置なら農地の外側に支柱を立てて架線をはるだけですから農地一時転用許可は不要でしょう。

通常の農地ソーラーシェアリング:架台設置の為、多くの支柱を農地に設置しないといけない。
日本の国土は2/3が森林です。このうち林業が不可能なほどの急峻地が多くありますが、こうした急峻地でも架線設置型太陽光発電は「木をほとんど切らずに」可能です。

林地ソーラーシェアリング:森林の3%に設置するだけで日本全体の電気エネルギーをまかなうことが可能です。
化石燃料やその製品を海外から買わなくてよくなれば日本の貿易収支は大幅に黒字になります。現在のイラン戦争だけでも8兆円ものお金が海外に流出するそうです。2022年度と同等なら35兆円/年もの節約になり、日本国内でこのお金が循環すれば極めて大きな経済効果となるでしょう。通常再生可能エネルギーの経済波及効果は直接効果の3.1倍といわれていますから、35兆円×3.1=108.5兆円/年になります。
そして、日本発技術であるペロブスカイト太陽電池と施工ノウハウをもって海外に展開すれば更に貿易収支の黒字は増やすことができるでしょう。
これだけの太陽光発電を日本全国でやると職人さんの工数がネックになりますが、架線設置型であれば、かなり工数削減が可能でしょう。また、ロボットを使った自動化も考えられます。

これはJR西日本の架線保守ロボットです。
このようなイメージのロボットにより、職人さんの危険業務の排除、自動化により大量施工が可能となります。
最後に:
今回は米国の引き起こしたイラン戦争により、大きな影響が世界全体に出ています。今回から当面、エネルギーの観点でコラムの執筆をしようかと思います。
以上、ご関心あれば下記までご連絡下さい。
宮本義昭:メールアドレス:ym00876216@gmail.com
(過去のコラム)
第1回:人手不足対策、地域の空き家問題対策、リフォーム事業拡大
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第1回 – 日本木材青壮年団体連合会
・海外人材紹介と定着サービス:フューチャーデザインラボ社のご紹介
第2回:少子化問題と木材産業の成長
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第2回 – 日本木材青壮年団体連合会
・中堅中小企業の売上利益拡大を支援:Revitalize社のご紹介
第3回:リプレイス大作戦その1~石炭の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第3回 – 日本木材青壮年団体連合会
・林業コンサルティング会社:KOSO社のご紹介
第4回:リプレイス大作戦その2~外材の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第4回 – 日本木材青壮年団体連合会
第5回:リプレイス大作戦その3~天然ガスと石油の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第5回 – 日本木材青壮年団体連合会
第6回:リプレイス大作戦その4~外材、化石燃料以外の代替
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第6回 – 日本木材青壮年団体連合会
第7回:生産性向上~林業 育林コストの大幅な削減
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第7回 – 日本木材青壮年団体連合会
第8回:生産性向上~林業 森林所有権の集約
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第8回 – 日本木材青壮年団体連合会
第9回:生産性向上~林業 10年後のあるべき森林管理をめざして
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第9回 – 日本木材青壮年団体連合会
第10回:生産性向上~林業 10年後の素材生産
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第10回 – 日本木材青壮年団体連合会
第11回:生産性向上~木質資源のエネルギー活用
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第11回 – 日本木材青壮年団体連合会
第12回:生産性向上~NPO法人 蔵前バイオエネルギーの取組
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第12回 – 日本木材青壮年団体連合会
第13回:生産性向上~自社へのAI導入:CosBE社
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第13回 – 日本木材青壮年団体連合会
第14回:生産性向上~機械学習データ作成:Netremer社
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第14回 – 日本木材青壮年団体連合会
第15回:生産性向上~スリープテック:株式会社ACCELStars(アクセルスターズ)
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第15回 – 日本木材青壮年団体連合会
(所属企業、団体)
株式会社バルステクノロジー 代表取締役社長
兼 株式会社KOSO アドバイザー
兼 日本木材青壮年団体連合会 広報委員会アドバイザー
兼 株式会社Revitalize アドバイザー
兼 株式会社Dione アドバイザー
東京科学大学(旧東京工業大学)基金特別会員
プラチナ構想ネットワーク 法人会員
先進EP研究会 会員
Asagiラボ 賛助会員
東海バイオコミュニティ 法人会員
林野庁 森ハブ・プラットフォーム会員
東京丸の内イノベーションプラットフォーム林業分科会
蔵前バイオエネルギー 正会員



木の未来を
つくる仲間へ
木材に関わる全国の若い経営者たちが集まり、交流・学び・活動を通じて業界の未来をつくっています。あなたも木青連の一員として、全国の仲間とともに木の可能性を広げてみませんか?

