2026.10.13

宮本義昭氏コラム

【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第22回

マネジメントの重要性

はじめに:

多くの企業や団体の支援をさせて頂いて重要性を再認識させられるのが「マネジメントの重要性」です。

実は日本ではマネジメントの意味が誤って伝わっている事が多く、正しく認識されている事が少ないように思います。日本語で管理と訳されることが多い事からも誤解を生んでいる概念だと思います。

では、マネジメントとは何でしょうか?一言で言うと何でしょうか?

この質問を大手コンサルティング会社の人、複数の人に聞いて答えられた人は一人もいませんでした。

マネジメントはピーター・ドラッカー(ピーター・ファーディナンド・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker、1909年11月19日 – 2005年11月11日)は、オーストリア・ウィーン生まれのユダヤ系オーストリア人)によって発明された概念・ツールです。

一言でいえば、「組織で成果を上げるための道具」です。

日本は失われた36年になろうとしています。下記図のように1990年から日本全ての企業の売上は全く増えていません。リストラ、コスト削減、により利益は増えており、株価は上がっていますが、それもやりすぎて競争力を失い中国、韓国、台湾、などの国の後塵を拝する事が多くなってきました。

OECDからは「日本にはマネジメント上の問題があるのでは?」と言われるほどの凋落ぶりです。既に世界競争力ランキングでは30位ともはや先進国とはいえない状況になってしまいました。

日本企業の国内売上高推移

今回はマネジメントにフォーカスし、林業・木材産業でどのように活かしていくか考察したいと思います。

マネジメントが生まれた経緯:

社会科学の分野では「国家」、「個人」、及び「国家」と「個人」の関係性は研究されてきました。しかし、ドラッカーは「国家」と「個人」の間に「組織」というものがあるのではないか!ということに気が付き研究対象としたといわれています。「組織」とは民間企業、公共団体のことです。

欧米、特に米国では移民が多いこともあり、「どこの馬の骨かわからない人を組織の中で戦力化するにはどうしたらよいか」という問題意識が底流にあり、日本とは背景が異なっていたことも日本でマネジメントが社会人として身につけるべきツールになっている元凶かもしれません。

ドラッカーは放牧地で牛追いの犬が思いのままに様々な方向に移動する牛を一定方向に追い立てて、夜間や畜舎に帰していく様子をマネジメントといわれていたので、そこから「マネジメント」と名付けたそうです。

人間社会の「組織」に合わせていえば、組織に所属する人達を組織として成果を最大化する為にリードしていくツール、ということになるでしょう。

日本へのマネジメント学説の紹介と野田一夫先生:

日本では、1956年に立教大学で教えていた野田一夫先生が、当時の日本で馴染みのなかったドラッカーの著書『The Practice of Management』の邦訳書である『現代の経営』を出版し、日本に初めてドラッカーの学説を紹介しました。

当初、野田先生はこの本を出版するにあたってダイヤモンド社へ話を持って行かれましたが、「ピーター・ドラッカーという人の名前は聞いたことがありません。」ということで断られてしまったため、別の出版社(自由国民社)から出版することになりました。

その頃は、どこの出版社も、あまり経営書の翻訳を出していない時代でした。出版されると同書はベストセラーとなり、日本でドラッカーが知られる契機となりました。後年、ダイヤモンド社はペーパーバックの翻訳権をとって、現代経営研究会訳の『現代の経営』を遅ればせながら出版しています。

この日本にドラッカー学説を紹介した野田一夫先生(のだ かずお、1927年6月22日 – 2022年9月3日)の父は日本人ではじめて航空力学を学んだ野田哲夫さん。野田哲夫さんは三菱重工業の技師として航空機製造の責任者となり、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の設計主任の堀越二郎も部下でした。

そうした父を誇りに思い憧れでしたが、戦後に航空への道が失われ(戦後GHQにより航空学科は解散させられました)、理系から文系に転じられたそうです。

1952年3月に、東京大学文学部社会学科(産業社会学専攻)を卒業。1955年、立教大学へ赴任。翌1956年、当時の日本で全く馴染みのなかったピーター・ドラッカーの著書『The Practice of Management』の邦訳書である『現代の経営』を出版。立教大学教授を定年退職した後、日本の経営学の開祖の一人として幅広い人脈を持ち、経営者らから 平成の吉田松陰、日本経済界のゴッドファーザーと呼ばれ、多くの国内外の企業の役員・顧問・コンサルタントなどを務められました。 親しい友人となったドラッカーの学説の日本への紹介者として、また、ベンチャー三銃士と呼ばれる孫正義、澤田秀雄、南部靖之をはじめ、多数の起業家型経営者が師と仰ぐメンターとしても知られています。

プラン ドゥ シー創業者の野田豊加は三男。成蹊大学元学長の野田信夫は叔父。

実は私自身も2002年、リクルートの結婚情報誌のゼクシィの大手クライアントであるプラン ドゥ シーの経営していた羽澤ガーデン(現在は契約満了につき閉店)というレストランで野田一夫先生にお食事をお付き合い頂いたことがあります。

マネジメントの内容

ドラッカーのマネジメントは、組織の成果を最大化し、社会に貢献するための創造的な活動であり、単なる管理ではなく「人の強みを活かす仕組みづくり」です。

マネジメント書籍

1.マネジメントの本質

ドラッカーはマネジメントを「組織で成果を上げるための道具」と定義し、権力や地位ではなく、成果を出すための機能や活動として捉えました。マネジメントは、組織の資源を最大限に活用し、個々のメンバーの強みを引き出すことで、組織全体の成果を生み出す創造的な活動です。

2.マネージャーの3つの役割

ドラッカーはマネージャーを「組織の成果に責任を持つ者」と定義し、役職の有無に関わらず、すべての知識労働者がマネジメントを実践すべきと説きました。マネージャーの主要な役割は以下の3つです:

組織特有の使命を果たす

組織の存在意義(ミッション)を明確にし、目標を設定してメンバーに共有し、組織全体を目的達成に向けて導く。

人を活かし成果を上げさせる

部下やメンバーの強みを見つけ、適材適所に配置することで生産性を高め、個々の能力を最大限に引き出す 。

社会の問題解決に貢献する

組織活動を通じて社会に価値を提供し、顧客の創造やイノベーションを通じて社会的課題に取り組む。

マネジメントを実践する5つの基本

ドラッカーは、マネジメントを効果的に行うための基本原則として以下を挙げています

組織の目標を設定する

成果を出すための組織を構築する

部下の動機付けと円滑なコミュニケーションを行う

仕事の成果を評価・測定する

部下と自己の能力を育成する

企業の目的と顧客創造

ドラッカーは企業の唯一の目的を「顧客の創造」とし、利益は目的ではなく条件であると説きました。マーケティングやイノベーションを通じて新たな価値を生み出すことが、組織の成長と社会貢献につながります。

ドラッカーの名言

「マネジメントとは、人のことである」

「人が成果を上げるのは強みによってのみである」

「組織の目的は、人の強みを爆発させ、弱みを無くすこと」

「凡人でも非凡な働きができる組織を目指す」

「リーダーシップとは責任である」

これらの言葉は、マネジメントの本質が人の強みを活かし、組織の成果を最大化することにあることを示しています。

まとめ

ドラッカーのマネジメントは、単なる管理業務ではなく、組織の目的達成と社会貢献を実現するための創造的な活動です。マネージャーや知識労働者は、役職に関わらず、自らの強みを理解し、周囲の人々の強みを引き出すことで、組織全体の成果を高めることが求められます。

日本企業にマネジメントが必要な理由

私が勤めていたリクルート(1987~2012年まで勤務)は創業者の江副浩正氏が野田一夫先生の門下生でもあり、マネジメントが会社の多くの制度、ルール、文化として取り込まれていました。(2002年に野田一夫先生から聞いたお話しではリクルート事件の裁判で江副氏を応援する為に証言台に立たれたそうです)

私がリクルートを辞めて、多くの企業経営者の方と接する機会が増えるとマネジメントが全く導入されていない企業が多い事に気が付きます。現在はほとんどの企業は企業の目標やミッションなどは公表されているものの、組織内のマネジメントはほとんど導入されていないことが多いようです。

東証プライム上場企業なのに人事部が無いというケースもあり、大企業でも中小企業でも共通するのが、

個々人の目標設定が言語化されていない。もしくは、企業の目標と整合的でない。

個人の評価がされていない、もしくは、されていても年に一度程度。

個人と上司が腹落ちするまで目標設定や評価について議論されていない。

個人のやりがいや自己実現に関して管理職が無関心。

などが目につきます。

多くの人達が目を輝かせて、やりがいを感じ、組織(民間企業や公共団体)の成果に貢献しているという貢献感を感じられる組織が増えることが日本企業や経済の再生の原点だと私は思います。

また、会社の業績にも当然影響しますし、私は特に目標設定の言語化と腹落ちするまで部下と議論するということが最も重要だと考えます。

最も業績に影響があったと思われる私の実体験です。

5年間赤字の関連会社の立て直し

2009年の6月、上司(後に社長となり、現在会長)に呼ばれて、ある関連会社の10月人事を全て任せるので早期に黒字化して欲しい、と言われました。早速、その会社の営業職以外の全社員(営業職は別の人が担当)の目標設定シートを取り寄せたところ、組織目標に整合的でない不適切な目標が多々設定されており、必要な業務を絞りこんでみると16人を6人でできる仕事であったため、10月人事で10人削減しました。早速10月人事で残った6人と個別面談し、本来やるべき仕事、部下がやりたいと思う仕事、やりがいを感じられる仕事に注力した結果、3ヶ月で単月黒字を達成しました。

システム部門の企画室の業務仕分けにより6割の仕事を削減

2011年、体調が悪く(超高血圧でドクターストップ状態、上が210、下が160のいつ死んでも不思議ではないくらいの超高血圧でした)、退職したい旨を上司に相談したところ、あと、1年何とかやって欲しいと言われ、最後はシステム部門の企画室長を拝命しました。何を具体的にやっている部署かわからなかったので、全員に何をしているか一覧化してもらい、全員と面談して、本当に必要な仕事、部下がやりたいと思える仕事に絞って、目標を再設定しました。その結果、6割の仕事を無くすことができました。全員と面談して、話していると、既に時代遅れになった仕事、現場で既に行われており二重になっている仕事、部下も私もやる価値が無いと思える仕事、など多数見つかりました。もちろん、その後、部長会で他の部長と事業部門長にも確認を取り、何とか2012年4月期の半期目標設定に間に合わせることができました。(約10日間でやりました)

上司から降りてくる経営目標と現場で感じている「やるべき仕事」の優先順位を付けて、期間内にぎりぎり終了できる目標を設定することが重要だと思います。

上司から降りてくる経営目標だけを部下に割り振っていることが、日本の自動車産業の日野自動車から発覚した一連の品質不正問題やニデック社や東芝などの会計不正問題、中部電力の原発審査不正問題を引きおこしていると私は思います。

林業・木材産業のマネジメント導入成功例

林野庁の有識者委員をさせて頂いている時に、視察で訪れた宮崎県の南那珂森林組合は私がリクルート以外で初めてマネジメントを実践されている組織だと感じました。

まず、従業員の人達は皆、目が輝いており、挨拶も皆さんちゃんとされていますし、雰囲気が良い職場だと感じました。そして、業績も右肩上がりで、事業総収益は5.8億円(平成13年)から27億円(令和3年)と4.65倍に増加していました。

私が南那珂森林組合のマネジメント層の方々との議論の際に「何故、これだけ組織が活性化していて、事業総収益が5倍近くになっているのか?」とお伺いしたところ、返ってくる答えは「事業領域の拡大:例えば造林だけでなく素材生産や苗木生産に取り組んだ」とか「事業量の拡大:管理している森林面積を増やした、契約している森林所有者を増やした」と、いった答えが返ってくると思ったのですが、実際は全く異なりました。

答えは「やりがいや自己実現を重視した目標設定を一人一人と丁寧にやっている」とのことでした。また、退職金も林退共(林業退職金共済制度)だけでは少ないので他の退職金制度も活用されているとのことでした。

このように従業員のやりがいを向上させ、待遇を改善し、現場一人一人が自ら考え、様々な改善アイデアや価値向上アイデアが出てきて、この5倍近くの事業総収益拡大につながったのでしょう。

一人一人の社員が自ら考え、自ら動き、提案して、自らのミッションを上司と相談して設定し、実現できれば、自己実現感は最大化できるでしょう。

今後の企業活動でも必須なマネジメント:

現在の日本は毎年佐賀県の人口が消滅する勢いで人口が減少しています。また、働き方改革により、日本人の総労働時間も減少しています。更にこの減少スピードは少子化により拡大していきます。

今でも人材採用に苦戦している企業はたくさんあるとお聞きしていますが、今後生産性向上に取り組んでも海外人材の活用も考えないといけない時期がやってきます。既に林業・木材産業の企業の一部が海外人材の採用を始めています。

その時に、阿吽の呼吸で良しなにやってくれていた日本人ではなく、言語化されなければ動かない、動けない海外人材、また、マネジメントをソーシャルスキルとして学んできている海外人材を受け入れる時にはマネジメントが取り込まれていないと「何をしていいのかわからない」「何故この評価なのかわからない」、などの不満から折角採用してもやめてしまうかもしれません。

また、これは海外人材に限った事ではなく、今の若い人のタイパ(タイムパフォーマンス)志向から言語化されず習得に時間がかかるような仕事の仕方には意義を感じず人材定着率低下を招くかもしれません。

最後に:

今回は非常にご相談の多いマネジメントについて取り上げました。組織としてどうしたら大きな成果を上げられるか、多くの企業が苦労されています。マネジメント導入が未実施な企業は是非導入をご検討下さい。

以上、ご関心あれば下記までご連絡下さい。

宮本義昭:メールアドレス:ym00876216@gmail.com

過去のコラム

※第1〜17回は公式コラム一覧へのリンクです。該当記事は一覧から選択してください。

(所属企業、団体)

株式会社バルステクノロジー 代表取締役社長

兼 株式会社KOSO アドバイザー

兼 日本木材青壮年団体連合会 広報委員会アドバイザー

兼 株式会社Revitalize アドバイザー

兼 株式会社Dione アドバイザー

東京科学大学(旧東京工業大学)基金特別会員

東京科学大学(旧東京工業大学)起業創業コミュニティ

東京科学大学 蔵前工業会 会員

東京科学大学 蔵前経営者懇話会 会員

プラチナ構想ネットワーク 法人会員 先進EP研究会 会員 Asagiラボ 賛助会員

東海バイオコミュニティ 法人会員

林野庁 森ハブ・プラットフォーム会員

東京丸の内イノベーションプラットフォーム林業分科会

蔵前バイオエネルギー 正会員

ソーラーシェアリング推進連盟 一般会員

(スタートアップ企業支援)

①フューチャーデザインラボ:海外人材紹介と定着

②クラフトバンク:職人さんDX

③アクセルスターズ:スリープテック

④Nextremer:AI機械学習データ作成

⑤CosBE:AIプロトタイピング

⑥Dione:プログラムコード作成自動化、プラットフォーム開発(Adviser)

⑦KOSO:林業コンサル、補助金に頼らない林業へ(Adviser)

⑧Revitalize:BPN(ビジネスプロデューサーネットワーク)(Investor)

⑨Interboro:ロボット稲作(Investor)

⑩YD-Plants:高麗人参自給率1%→X%へ(Investor)

⑪プラントフォーム:アクアポニックス、食料自給率向上(Investor)

⑫ESSH:廃棄物無害化、循環型経済(Investor)

⑬SORENA:廃棄リンゴからレザーを製造(Investor)

⑭Red Yellow And Green:プラントベース・環境配慮型厨房OX(Investor)

⑮Egregium:ロボアド2.0(Investor)

⑯Blueprint one:余剰脱脂粉乳のアップサイクル(Investor)

⑰堤水素研究所:世界最高効率の蓄電池、燃料電池、水電解装置製造(Investor)

⑱ZetaX社:リザバーコンピューティング

⑲SYNRA社:画像から静機械振動を抽出、計測、稼働監視、異常検知

⑳レッツ社:丸太のまま燃やせるボイラー

21.スペースワスプ社:植物廃棄物や木材から樹脂抽出し、独自開発の3Dプリンターで建材や家具を自動製造

22.エナウム社:有機廃棄物のエネルギー転換

23.ONSOH社:微細藻類の水産・畜産への展開

24.アットドウス社:新たな投薬プラットフォーム

25.オクシリア社:生成AI SaaS 社内データ活用

(拙著:代表作)

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