第25回木材活用コンクール受賞作品

第25回木材活用コンクール(令和3年度)

応募総数 82
第1部門 木造及び混構造建築(構造物)300 ㎡超え 30 37%
第2部門 木造及び混構造建築(構造物)300 ㎡以下 21 26%
第3部門 木質空間(インテリア・エクステリアの木質化) 11 13%
第4部門 クリエティブユース(1~3部門以外の創造的木材活用事例<ランドスケープ・インスタレーション・家具・木製品など>) 20 24%

審査委員会

審査総評

25回木材活用コンクールには82作品の応募がありました。応募総数としては昨年より約30%少なくなり、新型コロナウイルス感染症問題が始まってから2年連続の減少となりました。加えて今回は、所謂「ウッドショック」の影響による木材調達難・価格高騰により、木造建築物の計画変更や着工遅延が多発したことの影響もあったと思われます。

応募の内訳は、第1部門30作品、第2部門21作品、第3部門11作品、第4部門20作品であり、応募数では第1部門が一定数あったのに対し、第3部門が例年より少なくなっております。応募作品の内容は、四半世紀の歴史あるコンクールに相応しい、非常にレベルの高い作品が多く、また、最新の技術を駆使したものが目立っておりました。最終審査において、受賞作品として20作品を選定しましたが、部門ごとの内訳は、第1部門9作品、第2部門7作品、第3部門2作品、第4部門2作品となり、従来少なかった第2部門が健闘し、多くの秀逸な作品が選ばれました。

本年度も最優秀賞として大臣賞を2賞選定し、農林水産大臣賞は、最新の木造技術を使うことでCO2の固定化にも配慮し、地域産材をはじめとする大量の木材を使う事を可能にした学校建築が受賞しました。また、国土交通大臣賞は、銀座と言う日本を代表する高級商業地における高層建築物への木造利用が高く評価された商業施設が受賞しました。
その他、優秀賞、特別賞、部門賞など、全部で20の作品が受賞対象となりました。今回もまた、木材活用コンクールと言う賞の主旨に相応しい、木材の「活用」に焦点を置いた作品を選ぶことが出来たと考えております。さらに今回は、特別賞として令和3年度の日本木材青壮年団体連合会のスローガンに沿った「エンターテイメント賞」を設け、SNS上で出会った全国の建築学生と木材加工会社がWEB上でデザインして生み出した作品が、ストーリー性と全国の学生に木材活用の意義を拡げた点が評価されて受賞しました。日本木材青壮年団体連合会会員の皆様に選んでいただく木質開拓賞には、熊本震災を教訓とした、高耐力を維持しつつ金物を使わないCLT接合でアーチ屋根をデザインした銭湯が、独創的な空間を構築しているとして選ばれました。

今回のコンクールに応募された従来の価値観にとらわれない多くの作品は、木材活用の可能性を大きく拡げるものであります。今後の木材需要が大いに拡大することを期待いたします。

審査委員長
深尾 精一

審査員

(敬称略)
[審査委員長]

深尾 精一
首都大学東京(現 東京都立大学)名誉教授

[審査委員]

有馬 孝禮
東京大学 名誉教授

加藤 昌之
株式会社 加藤設計 代表取締役

古久保 英嗣
(公財)日本住宅・木材技術センター 理事長

霜野 隆
(一社)日本インテリアプランナー協会 代表理事会長

松井 郁夫
株式会社 松井郁夫建築設計事務所 代表取締役

藤田 香織
東京大学大学院 教授

土居 隆行
林野庁 木材産業課 木材製品技術室長

前田 亮
国土交通省 住宅局 住宅生産課 木造住宅振興室長

松原 輝和
日本木材青壮年団体連合会 会長

中村 晃輔
日本木材青壮年団体連合会 副会長

最優秀賞

農林水産大臣賞


流山市立おおぐろの森小学校
株式会社日本設計

<作品講評>
学校建築の木造化にあたり、LVLをはじめ、様々な新しい材料・技術を導入しており、極めて高く評価できる。木材活用への努力を強く感じる作品である。

国土交通大臣賞

HULIC & New GINZA 8
株式会社竹中工務店

<作品講評>
都市部における高層建築物の木質化への挑戦が極めて高く評価できる。銀座という日本を代表する高級商業地で全国の木材を高層建築物に利用した事は、今後の木材活用の拡大に大きく寄与するであろう。

優秀賞

林野庁長官賞


FLATS WOODS 千石
株式会社竹中工務店

<作品講評>
賃貸住宅へのCLTなど最新木造技術の提供は強く求められているフィールドである。普及型木材活用モデルとして完成度が高く、CO2の固定量なども数値で特定していることは高く評価できる。

(公財)日本住宅・木材技術センター理事長賞


Ueta LABO
有限会社UetaLABO
有限会社艸建築工房
株式会社桜設計集団構造設計室
株式会社中成

<作品講評>
CLTを美しい大きな三角形としてデザインしていることが高く評価できる。CLTと言う重厚な木質材料をを軽く見せている技術や接合金物の工夫なども素晴らしい。

(一社)全国木材組合連合会会長賞


あわくら会館
西粟倉村
アルセッド建築研究所
山田憲明構造設計事務所
NPO法人サウンドウッズ
梶岡建設株式会社
倉森建築設計事務所

<作品講評>
製材品を在来の構法で活用しており、地産地消に配慮し地域材を有効活用していることが高く評価できる。最新技術を使うことなく木材を大量に使った活用事例である。

(一社)日本インテリアプランナー協会賞


新宿みやざき館 KONNE
大成建設株式会社一級建築士事務所

<作品講評>
外部からも木材が美しく見えるインテリアの事例であることが高く評価できる。ルーバーの形状によって、時間帯によって日射を調整する技術も好ましい。

日本木材青壮年団体連合会会長賞 


桐朋学園宗次ホール
学校法人桐朋学園
隈研吾建築都市設計事務所
株式会社ホルツストラ
前田建設・住友林業共同企業体
銘建工業株式会社
株式会社中東

<作品講評>
見た目の美しさのみならず、木質化する事によって、音楽ホールとしての高い音響性能を実現していることが高く評価できる。

特別賞

エンターテインメント賞


NARAプロジェクト・わの休憩所
株式会社アーティストリー

<作品講評>
SNSで出会った全国の建築学生と木材加工企業が、全てWeb上でデザインし完成した作品である。作品完成までのストーリーと、全国の学生に木材活用の意義を広めた点が評価できる。

部門賞

第1部門賞


大豊町立大豊学園
有限会社艸建築工房
山本構造設計事務所
株式会社桜設計集団構造設計室
有限会社藤川工務店

<作品講評>
CLTと貫を組み合わせた構法が魅力的であり、高く評価できる。CLTなどの最新のEWと伝統的な構法を組み合わせ、地域材を活用して美しい校舎を作っている。

第2部門賞


神水公衆浴場(木質開拓賞とのダブル受賞)
ワークヴィジョンズ
黒岩構造設計事ム所
竹味佑人建築設計室

<作品講評>
地元の銭湯を残す興味深いプロジェクトである。金物を用いずに、CLTを契りで接合して組み合わせ、湾曲した天井を構成した秀逸な作品である。

第3部門賞


外房線 上総一ノ宮駅
東日本旅客鉄道株式会社
株式会社JR東日本建築設計

<作品講評>
LVLを用いて格子梁を構成しているが、梁成を変えて立体感が出るように工夫した駅舎である。地域材の利用も評価できる。

第4部門賞


木軸でつくる旅のくつろぎ空間
佐々木達郎建築設計事務所

<作品講評>
都市型のホテルの小さな客室に、様々な手法でふんだんにヒノキを利用していることが評価できる。空間と木材を上手く使って空間を演出している。

木質開拓賞(日本木材青壮年団体連合会会員賞)


神水公衆浴場(第2部門賞とのダブル受賞)
ワークヴィジョンズ
黒岩構造設計事ム所
竹味佑人建築設計室

<作品講評>
地元の銭湯を残す興味深いプロジェクトである。金物を用いずに、CLTを契りで接合して組み合わせ、湾曲した天井を構成した秀逸な作品である。

※「木質開拓賞」について
日本木材青壮年団体連合会 会員約800名による投票によって決定。
審査会より事前に投票を行っており、審査会当日その他賞と重複した場合はその賞とのW受賞とする。

木材活用賞


KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE
飛騨五木株式会社
(goboc設計事務所)
株式会社TAB
各務原学びの森株式会社株式会社井上工務店

<作品講評>
Park-PFI 事業に県産材を多く利用した、地域密着型の建物である。木造らしい骨組みが、公園の中に自然に溶け込んでいる。


リニモテラス公益施設
株式会社東畑建築事務所
株式会社ナノメートルアーキテクチャー一級建築士事務所
株式会社服部工務店長久手市

<作品講評>
小径材をラチス状に組むことにより、木材が強調された美しい構造体を創り出している。大空間の廊下と両側の部屋の組み合わせ方も優れている。


京丹波町役場 新庁舎
京丹波町
香山建築研究所
KAP
NPO法人サウンドウッズ
桜設計集団

<作品講評>
地場産材の製材を組み合わせて、準耐火構造の役場を実現している。平角製材組立柱の開発も評価できる。議場のインテリアも美しい。


住倉
小野良輔建築設計事務所
合同会社円酒構造設計
有限会社アオイ・ホーム

<作品講評>
奄美地方の伝統的な構法を踏まえて建設された魅力的な別荘である。シンプルな屋根の形状が美しく、空気環境なども南国に相応しい工夫がなわれている。


KAZAGURUMAキャンパス
澤田建設株式会社

<作品講評>
長い材が作れるというCLTの特徴を生かし、二階の高さの通し壁を用いたCLT建築のショールームである。防火地域における木造の挑戦も評価できる。


DLTHUT
株式会社長谷萬

<作品講評>
新しい素材であるDLT(ダボ・ラミネイティッド・ティンバー)を活用した建築物であり、意欲的な試みが評価できる。


六甲最高峰トイレ
神戸市
株式会社ofa
有限会社桃李舎

<作品講評>
CLTの特徴を活かし、大きな屋根下空間を生み出し、美しい共用トイレを実現していることが評価できる。六甲の山並に相応しいデザインである。


ゴカク軒
空間研究所

<作品講評>
三つのコアを機能的に配置し、そのコアが特徴的な構造デザインの屋根を支える構成が評価できる。内部の大空間の木材活用手法も見事である。