第27回木材活用コンクール受賞作品

第27回木材活用コンクール(令和5年度)

応募総数 157
第1部門 木造及び混構造建築(構造物)300 ㎡超え 50 32%
第2部門 木造及び混構造建築(構造物)300 ㎡以下 59 38%
第3部門 木質空間(インテリア・エクステリアの木質化) 27 17%
第4部門 クリエティブユース(1~3部門以外の創造的木材活用事例<ランドスケープ・インスタレーション・家具・木製品など>) 21 13%

審査委員会

審査総評

第27回木材活用コンクールは、昨年の数に近い157件の作品に応募して頂きました。
ウッドショックの影響も残る中、多くの応募があったことは素晴らしいことでした。応募の内訳は、第一部門50作品、第二部門59作品、第三部門27作品、第四部門21作品となりました。応募していただく作品のレベルは年々高まってきており、今年も素晴らしい応募作品が揃いました。非住宅・店舗等の作品が増えてきており、木材活用の裾野が広がってきていると感じております。
その中から今回は19件の作品が20の賞を受賞しました。コンクールの主旨に相応しい、木材の「活用」に焦点を置いた作品を選ぶことが出来たと考えております。

建築作品に関しては、今年も様々な木材活用方法が示されました。今回より創設された最優秀大賞・内閣総理大臣賞には、「徳島県新浜町団地県営住宅2号棟」が選ばれました。この建築は、現し木造4階建ての共同住宅であり、国産木材による柱梁構造で建設されています。共同住宅への木材利用の画期的事例として高く評価されました。農林水産大臣賞を受賞した「睦モクヨンビル」は、木造4階建てビルであり土台、柱、梁の躯体全てが一般製材で構成され、それらが「あらわし」の意匠を実現させており、意欲的な空間構成と合わせて高く評価されました。国土交通大臣賞には、CLTを用いた新たな構法などの技術開発と、その結果としての豊かな共同住宅の空間が評価された「江北小路」が受賞しました。

また今回設けられた、木材を用い様々な人の力を結合させた作品を表彰する「ウッド・コンビネーション賞」、そして、木材活用への取り組み、コミュニティー・行政等を巻き込んだ活動を表彰する「ウッド・ムーブメント賞」についても、それぞれふさわしい作品を選ぶことができ、賞を設けた意義があったと考えております。

受賞作品の第一部門から第四部門までの内訳は、8・7・3・2作品となり、第二部門の健闘が光りました。今回より「一般社団法人JBN・全国工務店協会」に審査委員会に加わっていただき、賞を新設していただいたことも、第二部門への意欲的な作品が多くみられたことの要因であったと考えております。今後も、よりレベルの高い作品が多数応募されることを期待いたします。

審査委員長
深尾 精一

審査員

(敬称略)
[審査委員長]

深尾 精一
首都大学東京(現 東京都立大学)名誉教授

[審査委員]

有馬 孝禮
東京大学 名誉教授

加藤 昌之
株式会社 加藤設計 代表取締役

古久保 英嗣
(公財)日本住宅・木材技術センター 理事長

霜野 隆
(一社)日本インテリアプランナー協会 顧問

松井 郁夫
株式会社 松井郁夫建築設計事務所 代表取締役

藤田 香織
東京大学大学院 教授

土居 隆行
林野庁 木材産業課 木材製品技術室長

原田 佳道
国土交通省 住宅局 住宅生産課 木造住宅振興室長

大野 年司
一般社団法人 JBN・全国工務店協会 会長

島田 直政
日本木材青壮年団体連合会 会長

最優秀大賞

内閣総理大臣賞

photo:Yohei Sasakura

photo:Yohei Sasakura

徳島県新浜町団地県営住宅2号棟
徳島県
有限会社内野設計
島津臣志建築設計事務所
株式会社カワグチテイ建築計画
株式会社長谷川大輔構造計画
亀井組グループ

<作品講評>
現しの木材を用いた軸組構法によって4階建ての公共集合住宅を実現した、極めて意欲的な作品である。330㎜角の柱梁が力強い立面を構成しており、室内にも木材がふんだんに用いられている。木材調達にも地域の林業に配慮しつつ適材適所の選択が行われている。

最優秀賞

農林水産大臣賞

睦モクヨンビル
有限会社睦設計コンサルタント
株式会社木構堂
株式会社山内組

<作品講評>
田の字型プランを中央に吹き抜けを持つように放射状に拡大し、四階建ての四つの空間を製材の柱梁で構成した、意欲的な建築である。吹き抜けを中心とする内部は、木材仕上げが溢れた空間である。用途も、コワーキングスペースやステイルームなど、現代的なものとなっている。

国土交通大臣賞

江北小路
有限会社睦設計コンサルタント
株式会社木構堂
株式会社山内組

<作品講評>
木造住宅密集地域の解消のための移転先共同住宅を、新しい木材活用の手法で建設した事例である。鉄骨と組み合わせた床の構法などに特徴があり、共用部分の造り方なども優れた集合住宅の設計となっている。

優秀賞

林野庁長官賞


岡山大学共育共創コモンズ
(OUX:オークス)
国立大学法人岡山大学
株式会社隈研吾建築都市設計事務所
清水建設株式会社

<作品講評>
地域産業であるCLTを活用し、新たな技術で用いることにより、講義室等に求められる大スパンを実現した建築である。市松状の壁・大断面の梁・巨大な庇などが、力強い木材の立面を創り出している。

(公財)日本住宅・木材技術センター理事長賞


昭和学院小学校ウエスト館
株式会社 日建設計

<作品講評>
既存の校舎に増築する形で造られた校舎であるため、階高を抑えることが求められる中、CLTを直交方向に重ねることによりフラットスラブを実現した学校建築である。軒先の処理や階段の構成などにも、CLTの特性が活かされている。

(一社)全国木材組合連合会会長賞


Toyota Technical Center Shimoyama
環境学習センター
株式会社竹中工務店

<作品講評>
森林環境の維持を目指し、地域の小径木を巧みに用い、複雑な立体トラスを構成したり、材をずらして継ぐことによる大スパンを実現した建築である。木材を活用した空間が見事に作り出されている。

(一社)日本インテリアプランナー協会賞


肉割烹 奥
環境デザインワークス

<作品講評>
木材の様々な組み合わせによって、木の香りに包まれた魅力的な空間を生み出している飲食店のインテリアである。古いビルの倉庫と機械室をリノベーションした空間であることも評価できる。

(一社)JBN・全国工務店協会会長賞 


剛な天井
豊橋技術科学大学水谷研究室/ M2A
株式会社イトコー
yasuhirokaneda STRUCTURE

<作品講評>
家族の歴史を重ねた農家の住宅のリノベーション事例であるが、欄間の高さの位置に、LVLと合板による格子状の水平構面を構築することによって、耐震性能を向上させている。省エネ性能の向上にも力を注ぎ、古い部材を意匠的にも活かしている。

日本木材青壮年団体連合会会長賞 


ぶどう農家の家
野田 啓介

<作品講評>
ぶどう畑の棚柱などをモチーフに、透明感のある柱梁構造で特異な立面を造り出した住宅である。垂木を現しにしたリビングの空間などにも、木の質感が強く感じられる建築となっている。

特別賞

ウッド・コンビネーション賞


立命館アジア太平洋大学
Green Commons
株式会社竹中工務店

<作品講評>
鉄骨造の教室棟の間に、交流空間としての大きな架構を、燃え代設計のラーメン構造で造り出した建築である。大部分の木材を、FSC認証を取得した地域産のスギ材としていることも評価できる。

部門賞

第1部門賞


野村不動産溜池山王ビル
清水建設株式会社
野村不動産株式会社

<作品講評>
燃え止まり層を持つ柱梁や、鉄骨を内蔵する梁など、建設会社によって開発された手法を用いた9階建てのオフィスビルである。CLTをRCスラブの型枠として用いるなど、適材適所で木材を活用した建築である。

第2部門賞


戸塚の社屋
株式会社伊藤暁建築設計事務所
株式会社山田憲明構造設計事務所
株式会社山仁コーポレーション                              株式会社ダイテック

<作品講評>
300㎜角の太い製材の柱にピン接合によるトラスを組み合わせることにより、合成ラーメン構造を造り出した中規模の事務所ビルである。室内には構造の木材が現しになり、開放的な空間が造りだされている。

第3部門賞


愛媛県立新居浜病院
愛媛県公営企業管理局
株式会社佐藤総合計画
鹿島建設株式会社
白石建設工業株式会社

<作品講評>
地域の医療を担う中核病院のアプローチとエントランスを、県産材を用いて大胆に構成した作品である。鉄骨を木材で被覆したY字型の柱と、それによって支えられているスギ材の三角格子の天井がランドマークとなっている。

第4部門賞


波のカウンター
株式会社フィールドフォー・デザインオフィス
清水建設株式会社
清水建設株式会社東京木工場

<作品講評>
リゾートホテルのフロントカウンターを、波状に切り出した板材をずらしながら重ねることにより、受付を行う広い面を構成するとともに、その下の蹴込の部分を作り出すという、機能的にも意匠的にも優れたアイディアである。

ウッド・ムーブメント賞


金山ウッドシティビル
株式会社三四五建築研究所
studioKOIVU一級建築士事務所
株式会社ザイソウハウス

<作品講評>

名古屋の都心部の二本の幹線鉄道沿いに作られた、木造の中規模テナントビルである。CLTの耐力壁を120㎜角の柱梁に組み合わせ、汎用工法となるとともに、周辺に面的に展開されることを狙っている。

木材活用賞


横浜共立学園中学校・高等学校 本校舎改修計画~横浜山手で90年続く歴史を継承する心の故郷となる木造校舎~
学校法人横浜共立学園
株式会社日本設計
株式会社山辺構造設計事務所
株式会社安藤・間

<作品講評>
築90年の木造校舎を、次世代に継承するために、巧妙な耐震補強を行い、木造の空間をできる限り活かした改修事例である。横浜市の指定有形文化財であり、たいへん丁寧な改修計画となっている。


鐙瀬ビジターセンター
五島市長 野口市太郎                                  株式会社アーキヴィジョン広谷スタジオ
株式会社今村組
福江電設株式会社
有限会社椛島組

<作品講評>
五島列島の観光のためのビジターセンターと、地域の交流拠点としての施設を、木材による架構で実現した建築である。水平力は鉄筋コンクリート部分に負担させることにより、眺望を重視した開放的な構成となっている。


神戸市中央区役所・中央区文化センター
神戸市建築住宅局
株式会社日本設計
大林組・神鋼興産建設特定建設工事共同企業体

<作品講評>
文化交流機能を併せ持つ区役所のファサードを、環境調整機能を持たせた彫の深い構成とし、そのスカイデッキの軒天上を県産材で仕上げた印象的な建築である。内部にも、各所に地域産材が用いられている。


SHELL×SHELF
森庄銘木産業株式会社
株式会社阿部蔵

<作品講評>
24φという細い木材の丸棒を、HPシェル状になるように棚板を貫通させ、自立させるとともに、本を立てることのできるシェルフとした、アイディアに溢れた作品である。奈良県産のヒノキが用いられている。

木質開拓賞(日本木材青壮年団体連合会会員賞)

睦モクヨンビル
有限会社睦設計コンサルタント
株式会社木構堂
株式会社山内組

<作品講評>
田の字型プランを中央に吹き抜けを持つように放射状に拡大し、四階建ての四つの空間を製材の柱梁で構成した、意欲的な建築である。吹き抜けを中心とする内部は、木材仕上げが溢れた空間である。用途も、コワーキングスペースやステイルームなど、現代的なものとなっている。(農林水産大臣賞を同時受賞)

※「木質開拓賞」について
日本木材青壮年団体連合会 会員約800名による投票によって決定。
審査会より事前に投票を行っており、審査会当日その他賞と重複した場合はその賞とのW受賞とする。