目次
第10回木材活用コンクール(平成18年度)
応募総数 | 134 |
審査委員会
審査講評
ここ十数年の間に環境に対する関心は大きく変わった。自然材料の良さを見直そうという人が増えたにもかかわらず、それが木材界の活性化につながる効果はあまり期待できそうもなかった。そこで木材の新しい魅力的な使い方を見出し、それに光を当てて、一般の方々に木の良さを見直してもらうために、このコンクールを企画したのであった。しかし予算も乏しく、そうした企画の経験も少ない木青連にとっては、初めての催しの成果について、少なからぬ不安があった。それにもかかわらず、企画に賛同して協力を惜しまぬ審査員の先生方や、木青連の会員の努力によって、第一回のコンクールに応募した作品の中には予想を越えるレベルのものもあって、安堵の胸を撫でおろした記憶がまだ残っている。だが、それからすでに10年の歳月を経て第10回の募集となった今年は、応募作品も130点を超え、技術的レベルも年を追うごとに向上して来た。これはまことに喜ばしいことと言ってよかろう。
これまでの経験で一応の基礎は固まったので、今後はさらに一層発展させていくように努力していただきたいと思う。なおここで望みたいのはエクステリアとインテリアの部門の応募を充実させて欲しいことである。市場にはかなりよいものも見受けられるので、応募するようにすすめていただけば、このコンクールは一層有意義なものになると思う。
審査委員長
小原 二郎
審査員
(敬称略)
[審査委員長]
小原 二郎
千葉工業大学・常任理事 名誉教授
[審査委員]
岸 純夫
(財)日本住宅・木材技術センター理事長
栗山 正也
KDアトリエ所長
日本インテリアプランナー協会・専務理事
有馬 孝禮
宮崎県木材利用技術センター所長
黒川 哲郎
東京芸術大学美術学部建築科・教授
松井 郁夫
有限会社松井郁夫建築設計事務所・代表取締役
深尾 精一
首都大学東京工学部建築学科・教授
征矢 隆
木構造振興株式会社・取締役
加藤 昌之
株式会社加藤設計・代表取締役
角 博
日本木材青壮年団体連合会・会長
米地 徳行
日本木青連木材活用コンクール委員会・委員長
最優秀賞
林野庁長官賞
篠山市営福住本陣団地 |
(有)才本建築事務所 |
兵庫県西宮市 |
<詳細資料>篠山市営福住本陣団地 |
<作品講評>
この作品は古い宿場町の中に新しい公営住宅を建てるにあたり、いかにうまく両者が融け合うかという問題を、巧みに解決したところにそのポイントがあるといってよい。周辺の住民には新しい家が目ざわりにならないように、また新しく入居する人達には、そこがやがて第二の故郷として誇れるようなたたずまいになるように、設計にあたっては苦労したという。貝体的には、既存の町屋の軒や腰の杉板の高さを測ったり、母屋と蔵の関係や棟の方向を考慮したり、また面格子や虫籠窓に至るまで調べて、デザインの中に盛り込むように工夫した。それによって町並みづくりに成功している。伝統的な地域に馴染む街造りの行き届いた細心の計画を評価したい。また建築材料の杉や桧は地域産のものを使用し、施工も地元の建設会社を中心としたJVを選んだ着想も評価できる。上記の理由により林野庁長官賞に推薦した。
優秀賞
(財)日本住宅・木材技術センター理事長賞
生きものと一緒の棲み家・ぬちゆるやー |
後藤道雄 後藤典子 |
沖縄県中頭郡 |
<詳細資料>生きものと一緒の棲み家・ぬちゆるやー |
<作品講評>
沖縄ではかつては木造の家が40%もあったが、現在はそれが退化して、最近における木造住宅の着工率は1.3%に過ぎないという。この建物の名称は「命がたくさん寄って来る家」という意味だそうで、環境教育施設として建てられたものである。その立地は人口の密集する沖縄本島の中心部の市街化調整区域である。そこに木造の施設を建てた意義は極めて大きいものがある。計画の主旨は成長期にある子供たちに、木の空問で教育することの効果を期待したという。木の癖を読み取リ、金物を使わないで伝統的技術を使って組まれた木の家から、素材の温かさや親しみやすさ、さらにまた手造りの難しさや魅力を学ぶことも期待している。教育上からも木の文化を学び取らせようという企画を高く評価したい。
全国木材組合連合会会長賞
甲斐市玉幡公園「Kai・遊・パーク」総合屋内プール |
(株)松田平田設計 |
東京都港区 |
<詳細資料>甲斐市玉幡公園「Kai・遊・パーク」総合屋内プール |
<作品講評>
この建物は公園施設の一部として計画された平屋建てのプールである。公園の主役は芝生であるが、それと周囲の山並みに調和するように作られている。建物のボリュームを分割することで木造の架構形式にした。それは大断面集成材の特徴を活かして門型3ヒンジのラーメン構造とし、桁方向のキール梁を中心にして張弦トラスを応用した。そのため木質構造の計算や部材の取合いと収まりについては、特に細心の注意を払ったという。使用した樹種は北海道産のカラマツである。今後の管理が重要と思われるので、メンテナンスに注意されるように望みたい。
日本木材青壮年団体連合会会長賞
桜井の家 |
長谷川設計事務所 長谷川総一 |
兵庫県尼崎市 |
<詳細資料>桜井の家 |
<作品講評>
この家は30歳代の共働きの夫婦と男の子供2人の棲み家として設計されたものである。用材は柱には桧、梁には杉を用い、床も天井も家具も地元材を使って作られている。家の3面が道路に面しているので、外観は杉板張りの格子塀にした。1階をパブリックスペース、2階をプライベートスペースとして、上に向かって視線が拡がるように工夫したところに工夫の跡が見られる。建物として特記すぺきところは少ないが、全体としておおらかな住まいをねらい、それに成功している点を評価した。
部門賞
第1部門賞(木造建築部門賞)
15の木箱 |
小西彦仁 |
北海道札幌市 |
<詳細資料>15の木箱 |
特別養護老人ホーム竜爪園 |
社会福祉法人天心会 安池倫成 |
静岡県静岡市 |
<詳細資料>特別養護老人ホーム竜爪園 |
国際交流セミナーハウス |
高木和芳 |
奈良県五條市 |
<詳細資料>国際交流セミナーハウス |
第2部門賞(住宅部門賞)
四季薫る家 |
オークヴィレッジ木造建築研究所 上野英二 |
岐阜県高山市 |
<詳細資料>四季薫る家 |
第3部門賞(エクステリア部門賞)
あすなろ保育園エントランスホール |
則岡宏牟 |
兵庫県伊丹市 |
<詳細資料>あすなろ保育園エントランスホール |
第4部門賞(インテリア・家具部門賞)
木肌で癒される産婦人科医院 |
デザインルーム萌 佐々木則子 |
東京都世田谷区 |
<詳細資料>木肌で癒される産婦人科医院 |
#3606 B/L/D/K/W |
浜野忠彦 |
大阪府大阪市 |
<詳細資料>#3606 B/L/D/K/W |
Atelier珠 |
大滝珠乃 |
岡山県岡山市 |
<詳細資料>Atelier珠 |
アイデア賞
ツリーハウス プロジェクト |
東京工芸大学 鉄矢悦朗 |
東京都小金井市 |
<詳細資料>ツリーハウス プロジェクト |
木材の三次元圧縮成形加工技術 |
中野俊文 |
東京都八王子市 |
<詳細資料>木材の三次元圧縮成形加工技術 |
努力賞
藤岡町道の駅 みかも |
杉本洋文 |
東京都千代田区 |
<詳細資料>藤岡町道の駅 みかも |
東通村立東通小学校 |
(株)シェルター 小野寺淳 |
山形県山形市 |
<詳細資料>東通村立東通小学校 |
千早赤阪の民家再生 |
輝建設(株) 小原公輝 |
大阪府大阪市 |
<詳細資料>千早赤阪の民家再生 |
第10回木材活用コンクール審査会を終えて
平成18年度木材活用委貝会委員長を務めさせていただきました米地です。第10回木材活用コンクールを開催するにあたっては、審査委員の先生方をはじめ関係者各位のみなさまにはひとかたならぬご協力を頂きまして厚く御礼申し上げます。
去る平成19年3月18日(日)に東京都江東区亀戸文化センターにて第10回木材活用コンクール審査会が開催されました。北は北海道から南は沖縄まで日本全国から集まった133作品のうち、10名の審査委員と日本木青連会員とで約6時間に及ぶ審査の結果、17作品の入選が決まりました。今年は第10回の節目にふさわしく、どれもレベルの高い作品で、入選から漏れた作品におきましても、ほとんどの作品が最終審査まで残り、選考までに時間がかかったすばらしいものでありました。
この木材活用コンクール開催にあたっては、初代木材活用委員長が小原先生を初めて訪ねた時、「木材の普及のためになにかやりたい!お金は無いけど汗は流します! 」という情熱に絆され、そこから各先生方に声をかけてくださり、木材活用コンクールが出来上がってきたと聞きました。第10回を迎えた木材活用コンクールも先輩方の情熱を継承し、今後ますます進化・発展しますようよろしくお願い申し上げます。
さて、最後に個人的なことを述ぺさせていただくと、昨年の9月私は体をこわして1ヶ月ほど入院してしまいました。ちょうど作品集めで一番大事なときです。こんな大事なときに入院してしまうなんて…と精神的にもとても参っていました。ところが、動けない私に代わって木材活用委貝会のメンパーが精力的に活動してくださり、結果的に例年より多くの作品の応募をいただきました。今年度無事にコンクールを終えることができたのは、ひとえに委員会メンバーのおかげです。ほんとうにありがとうございました。
平成18年度日本木材青壮年団体連合会
木材活用委員会 委員長 米治 徳行