第28回木材活用コンクール受賞作品

第28回木材活用コンクール(令和6年度)

応募総数 100
第1部門 木造及び混構造建築(構造物)300 ㎡超え 37 37%
第2部門 木造及び混構造建築(構造物)300 ㎡以下 21 21%
第3部門 木質空間(インテリア・エクステリアの木質化) 18 18%
第4部門 クリエイティブユース(1~3部門以外の創造的木材活用事例<ランドスケープ・インスタレーション・家具・木製品・リユース・DIYなど>) 24 24%

審査委員会

審査総評

28回木材活用コンクールは、昨年より減少し100件の作品に応募して頂きました。減少はしましたが、その内容はレベルが高く、木材の活用に関する関心が高まっていることを感じさせます。応募の内訳は、第一部門37作品、第二部門21作品、第三部門18作品、第四部門24作品となりました。

今回は審査方法を大きく改め、第一部門と第二部門のグループと、第三部門と第四部門のグループの、二つのグループに分けて審査を行い、特に後者のグループには、新たな審査員に参加していただきました。

受賞作品の内訳は、第一部門から10作品、第二部門から3作品と、前者のグループから13作品、そして、第三部門から5作品、第四部門から3作品と、後者のグループから8作品、計21の優れた作品となりました。受賞作品は第二部門が昨年の8作品から大幅に減少したほかは、昨年の比率に近いものとなりました。次回は、第二部門からの多くの作品の応募を期待したいところです。

農林水産大臣賞を受賞した「EF木材加工場」は、120㎜角とその半割材を組み合わせて、不定形で大きな空間を創り出していることが、高く評価されました。また、国土交通大臣賞を受賞した「十津川村災害対策本部拠点施設」も、地域で入手可能な製材を用いた建築ですが、建築のみならず、地域での様々取り組みの一環であることが評価されました。

昨年に引き続き設けた「ウッド・ムーブメント賞」は、第四部門から、様々な展開が期待できる、木材を用いたシステムの提案が選ばれました。また、今回新設された「グローアップ賞」は、第三部門から、様々な形態の内装に木材を活用した事例が選ばれました。

木材青壮年団体連合会の会員の方々に選んでいただく「木材開拓賞」は、例年は他の賞との重賞となることが多いのですが、今回は単独受賞となりました。会員の方々には、建築設計として優れており、かつ室内のあたたかな雰囲気の感じられる作品を選んでいただいたことに敬意を表します。

今後も、木材活用コンクールに、より高いレベルの作品が多数応募されることを期待いたします。

審査委員長
深尾 精一

審査員

(敬称略)
[審査委員長]

深尾 精一
首都大学東京(現 東京都立大学)名誉教授

[審査委員]

有馬 孝禮
東京大学 名誉教授

加藤 昌之
株式会社 加藤設計 代表取締役

宮澤 俊輔
(公財)日本住宅・木材技術センター 理事長

霜野 隆
(一社)日本インテリアプランナー協会 顧問

松井 郁夫
株式会社 松井郁夫建築設計事務所 代表取締役

藤田 香織
東京大学大学院 教授

武藤 信之
林野庁 木材産業課 木材製品技術室長

中澤 篤志
国土交通省 住宅局 住宅生産課 木造住宅振興室長

安成 信次
一般社団法人 JBN・全国工務店協会 会長

甲村 耕三
日本木材青壮年団体連合会 会長

最優秀賞

農林水産大臣賞

エバーフィールド木材加工場
久原 英司
小川 次郎
小林 靖
池田 聖太
山田 憲明

<作品講評>
強度の高い地元小国杉の一般流通材に拘って複雑なトラス構造の組み合わせでこれだけの大空間を実現した設計も素晴らしいが、これを社員大工さんが施工したことも大きな意義がある。想像をはるかに超えた建物。

国土交通大臣賞

十津川村災害対策本部拠点施設
RFA 藤村 龍至
金箱構造設計事務所 金箱 温春

<作品講評>
RCを採用することが多い防災拠点施設で木造を選択して積極的に木材活用しており、事前に地元で供給可能な部材断面の大きさと長さを確認したうえで設計しているところも評価できる。また菱十字構造の美しさを上手く見せている。

優秀賞

林野庁長官賞


伊勢遺跡史跡公園遺構展示施設
滋賀県守山市
株式会社平田晃久建築設計事務所
tmsd萬田隆構造設計事務所
株式会社日建
株式会社シェルター

<作品講評>
凹凸のついた杉無垢天井材の設計と施工技術が素晴らしく、圧倒的な木質空間で来館者に強く木のインパクトを与えている。デザイン性が高く、汎用性が効く新たな木材の使い方を提案している。

林野庁長官賞


meet tree GINZA
株式会社成瀬・猪熊建築設計事務所
丸山木材ホールディングス株式会社
株式会社meettree

<作品講評>

都市部における桧一般流通正角材を使った新たな利用方法でデザイン性の高い室内空間を演出している。正角材を若干斜めに落として台形を連続させるという単純なようで難易度の高いアイディアが素晴らしい。

(公財)日本住宅・木材技術センター理事長賞


リブウッド大阪城
オリオン建設株式会社 樋上 雅一
有限会社ビルディングランドスケープ 山代 悟、西澤 高男、久松 慶子、中村 朋世
株式会社U’plan

<作品講評>
敷地内の途中に下水管が通っているなど非常に条件が悪い大阪の都市部で耐火性能を担保しながら、全国の多様な産地の材料を使った木造ビルを実現しており、木造や木材の見せ方への強いこだわりが感じられる作品となっている。

(一社)全国木材組合連合会会長賞


山都町総合体育館パスレル
山都町
株式会社安井建築設計事務所
西松・三栄特定建設工事共同企業体 西松建設株式会社 九州支社

<作品講評>
山都町産ヒノキ丸太から製材した一般流通サイズのJAS材を使った弓弦トラスと鉄骨トラスのハイブリッド構造でダイナミックな大空間を実現しており、下弦材の接合部を追っ掛け継ぎ手を採用するなど構造的な工夫と加工技術も素晴らしい。

(一社)日本インテリアプランナー協会賞


第2名古屋三交ビル
三交不動産株式会社
株式会社竹中工務店

<作品講評>

多くの人が訪れる都市部の屋内公開空地の大空間にルーバー材でダイナミックで美しいR面をつくる繊細な設計と施工技術が素晴らしく、利用者にとって居心地のいいモダンで洗練された木質空間を作り出している。

(一社)JBN・全国工務店協会会長賞 


京北の木材で大工の卵たちと造る磨き丸太方杖のある木造倉庫
髙橋勝建築設計事務所 髙橋 勝
京北森林組合 三間 恭二
東工務店 東 昇平
京都建築専門学校 佐野 春仁

<作品講評>
プレカット加工が主流となって墨付け出来ない大工が増えている中で大工加工技術の伝承がつながる若手を育てる取り組みが素晴らしい。

日本木材青壮年団体連合会会長賞 


AQ Group本社屋
株式会社AQ Group
有限会社野沢正光建築工房
株式会社ホルツストラ
株式会社田中工務店
株式会社伊佐建設

<作品講評>
8階建ての木造を実現するために様々な構造的工夫がされており、耐火構造のため被覆された主要構造材の間に高倍率の格子耐力壁を現しで配置することで構造的デザイン性を高めながら木造ビルであることを外部に強く発信している。

特別賞

グローアップ賞


四万十市総合文化センター しまんとぴあ
四万十市
株式会社東畑建築事務所
有限会社鳥設計事務所

<作品講評>
施設のあらゆるところにルーバーや格子組で地元の四万十ヒノキを上手く使っており、音響素材としての木材利用をしながら柔らかくて美しい空間を作り上げている。メインファザードの軒庇にも桧材をR面に施工することで出迎える来館者に強いインパクトを与えている。

ウッドムーブメント賞


モバイルインフィル®︎
大成建設株式会社一級建築士事務所
株式会社山二建具

<作品講評>
主要な構造となっている部材の4本の組み合わせ方が非常に巧妙で上手い。組み立てから解体までの施工性もよく考えられているおり、クランプ金物を使った同様のタイプのものと比べるとデザイン性も優れている。

部門賞

第1部門賞


DLT木造仮設住宅
株式会社坂茂建築設計
株式会社家元
株式会社長谷川萬治商店

<作品講評>
一般流通材を利用したDLTでユニットを作って千鳥状に配置するカルバート構法という斬新で効率的な設計で恒久的な仮設住宅を建設しており、被災者に安心な住まいと木の温もりを提供している。汎用的で今後の普及にも期待できる。

第2部門賞


大法師山の立体格子
株式会社浜田晶則建築設計事務所
合同会社円酒構造設計
株式会社水雅
齋藤木材工業株式会社

<作品講評>
立体格子の木架構が非常に象徴的な社屋となっており、4寸角の束ね柱と束ね梁の接合部や伝統的な貫構法でなく金物構法を採用するなど構造的な工夫が随所にみられる。

第3部門賞


Toyota Technical Center Shimoyama車両開発棟・来客棟
トヨタ自動車株式会社 前田 京美
株式会社竹中工務店 牧村 将吾

<作品講評>
間伐材を簡素な継ぎ手で音を拡散する音響素材として木材利用する工夫が素晴らしい。RC構造の建物でありながら、細く短い間伐材を組み合わせた張弦梁や木目を綺麗に見せる意識など全体的に繊細な設計で木の良さを上手く引き出した空間づくりが高く評価できる。

第4部門賞


Fat Wood Shoji / 肥松の障子
株式会社 藤致滋建築設計 藤 致滋

<作品講評>
木材を薄くスライスすることで肥松の色味や木目を活かすアイディアが非常に斬新でインテリアデザインとしてのインパクトが強く、障子だけでなく他の用途にも活かせる木材の新しい使い方を提案している。

木材活用賞


NISHIU de repos
株式会社 KITO REAL ESTATE
環境デザインワークス

<作品講評>
地元産の大径材を利用して、杉の心材と辺材の特性を活かした芯去り平角材の使い方が見事で、構造材、内外装材ともに木材使用量が多い点とエレベーターシャフトまで木造となっている点も評価できる。


カモ井加工紙営業事務所棟
カモ井加工紙株式会社
武井誠+鍋島千恵/TNA
満田衛資構造計画研究所
株式会社藤木工務店倉敷支店

<作品講評>
耐震壁が無く、断面欠損を最小限に抑えた他に類を見ない木架構であり、これを実大実験結果を基に慎重な構造解析を経て実現している点が評価できる。


苔庭の家
株式会社セルスペース

<作品講評>
複雑な形状の曲面天井を6ミリ厚のリブ加工板で上手く施工しており、上品な木質空間を演出している。


岡崎のオフィス
荻原雅史建築設計事務所 荻原 雅史
株式会社片桐建設

<作品講評>
平面が台形かつ立面が三角形で非常に変化に富んだ面白い空間を作り上げており、今後の展開に期待したい。


枝ベンチ
松永木工所 松永 昭彦
mo-guz

<作品講評>
山の伐採現場に行けばどこにでもあるような枝付き丸太を上手く利用した創造性の高い作品で、端をRにすることで木目を綺麗に見せながらデザイン性を高めている。木目製作時のワクワク感が伝わってくるとても楽しい作品となっている。

木質開拓賞(日本木材青壮年団体連合会会員賞)

石川県森林公園屋内木育施設 もりのひみつきち
石川県
金沢計画研究所
豊蔵・サンエキ特定建設工事共同企業体

<作品講評>
メインとなる木育ホールの放射状レシプロカル構造の小屋組みが良いデザインになっている。エントランスホールの有機的多角形屋根や二重筒状耐力壁面など非常に他に例を見ない構造が特徴的で素晴らしい。

※「木質開拓賞」について
日本木材青壮年団体連合会 会員約800名による投票によって決定。
審査会より事前に投票を行っており、審査会当日その他賞と重複した場合はその賞とのW受賞とする。