目次
第8回木材活用コンクール(平成16年度)
応募総数 | 90 | ||
第1部門 | 木造建築・構造物 | 22 | 24% |
第2部門 | 住宅 | 40 | 44% |
第3部門 | エクステリア | 7 | 8% |
第4部門 | インテリア | 18 | 20% |
第5部門 | 木材加工技術 | 3 | 3% |
審査委員会
審査講評
このコンクールは木材を用いた優秀な作品を選び出して光を当て、それを広く紹介することによって、木材業界の発展に寄与することを期待して企画されたものである。本年は第8回に当たる。コンクールには5部門が設けられていて、それぞれの部門ごとに優秀作品を選び出す仕組になっている。
本年の応募総数は90件で、その内訳は住宅部門40件、建築部門22件、エクステリア部門7件、インテリア部門18件、新しい加工部門3件であった。昨年に比べて数においてはやや減ったが、質的にはかなり高いレベルのものも多く、回数を重ねるごとに充実して行く実績の見られるのは頼もしいことである。このような成果が得られたのは、コンクール業務を担当された委員の方々の努力によるところが多い。そのご苦労に感謝の意を表したい。幸い近年は社会全体の環境保全に対する認識の深まりにともなって、木材への評価が高くなって来ている。その追い風を受けて、このコンクールが一層の発展をとげて行くことを期待したい。また地元の設計事務所や工務店もこのコンクールで賞を獲得して、繁栄への一助にしていただくことを希望したいと思う。
審査委員長
小原 二郎
審査員
[審査委員]
岡 勝男
(財)日本住宅 木 技術セ タ 理事長
有馬 孝禮
宮崎県木材利用技術センター所長
征矢 隆
振興株式会社専務 取締役
栗山 正也
ア リエ代表、日本インテリアプランナ 協会 専務理事
加藤 昌之
株式会社加藤設計 代表取締役
山田 貴敏
日本木材青壮年団体連合会 会長
木脇 章太郎
日本木材青壮年団体連合会 木材活用委員長
最優秀賞
林野庁長官賞
大分県日田高等学校新体育館 |
(有)デザインリーグ一級建築士事務所 |
黒川 哲郎 |
<詳細資料> |
<作品講評>
わが国の森林の多くはスギとヒノキを中心とする人工林に変わったが、そこから産出される木材は、強度についても形状についてもばらつきが多いために、丸太のままでは建築用として扱いにくい。黒川哲郎氏は多年にわたる研究によって丸太を用いた新しい架構法を開発し、大形の公共建築を木造化させる道を拓いた。今回の応募作品はその中の1例である。丸太の加工には熟練を必要とするが、独自の治具と電道具を用いて効率化をはかり、洗練されたデザインの建物を高い精度で完成させている。外材の輸人によって窮地に立つ林業界に地元材の活用の道を拓き、地域産業に明るい希望を与える作品といえよう。その点を高く評価して林野庁長官賞に推薦した。
優秀賞
(財)日本住宅・木材技術センター理事長賞
野添であい公園パークセンター |
設計組織アルキメラ |
山田 宰 |
<詳細資料> |
<作品講評>
野添であい公園パークセンターは、弥生時代の集落遺跡を中心として作られた播磨文化ゾーンであるが、その入ロゲートと管理棟などを含む一連の構築物が今回の応募作品である。隣接する寺院には五重塔や日本庭園があるので、その背景との釣合いを考慮して木造とし、それに新しい時代の息吹を加えて計画が進められた。用材には地元のスギやヒノキを使い、在来工法の延長線上の技術で施工できるように工夫した。その完成されたゲートのデザインは大胆でかつ秀逸である。具体的には4本の組柱による架構、現場集成によるR梁、構造格子による合成梁等が特徴としてあげられる。地元の大工さん達が嬉々として組み上げていった姿が目に見えるような活気に富む作品といってよい。今後このような新しいアイデイアが生まれてくる動機となることを望みたい。
全国木材組合連合会会長賞
金沢邸 |
美建設設計事務所 |
桜田 文昭 |
<詳細資料> |
<作品講評>
この住宅は、120年前に盛岡市の中心にあった古い学校校舎に使われていた古材を再利用して、約60年前に建てられた家である。今回それをリフォームしたのである、主目的は断熱とバリアフリーおよび二世帯住宅への改修であった。リフォーム工事の実施に当っては、地元材の古材を再々利用して、木材利用の生命の長さを証明しよう考えたが、それが見事に成功している点を評価した。古材と新材とを組合わせて新しいデザインのインテリアを創出した工夫や、古い柱や梁を生かした技術などは、民家再生に広く応用できるものであろう。
日本木材青壮年団体連合会会長賞
Ora |
スタジオ・アーキファーム |
峯田 建 |
<詳細資料> |
<作品講評>
この作品は、楕円形で中庭を持つ変わった形の木造住宅を軸組工法を使って作りあげたところに、大きな特徴がある。施主は若いデザイナー夫婦で、建てるにあたっての要求条件は「出来るだけプライバシーを保ちながら、外界の季節の移ろいを感じられる土に接した空間が欲しい」ということであった。それに答えたのがこの住宅であるが、構造は木造軸組工法、で特別に新しい工法を用いたわけではない。いわば「円形の在来工法住宅」といってよいものであろう。特殊な住み手の要求条件に対する解答であるから、このままでは一般への普及効果は望み難いが、在来工法の技術でもこのように変わった住宅の出来るという発想が、次の新しい木材利用の道を拓くであろうことを期待して、賞を与えることにした。
住宅部門
入賞
木の薫る家 |
サポートセンター建築設計事務所 |
木脇 義三 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
妖肥杉をふんだんに使用した大黒柱が特徴の住宅である。勾配天井で構造材を見せる所が評価された。
戸建の木の集合住宅 |
大西憲司設計工房 |
大西 憲司 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
自然を取り入れた緑豊かな賃貸住宅である。敷地と住宅のバランスのとれたところが評価された。
沢良宜の小住宅 |
現代計画研究所 |
江川 直樹 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
都市型住宅にして、国産スギ材を骨太にしたシンプルさと間取りの明るさが評価された。
S/N |
株式会社池田昌弘建築研究所 |
松野 勉・相澤 久美・池田 昌弘 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
うねりのある住宅である。光を上手く取り入れ、外からのプライバシーも確保している。
特別賞
小宮邸 |
平山 正美•島田 真弓・兼弘 彰 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
築70年を超える木造住宅を改修プランにより、構造の強度を確保し、また古材と新材の調和が取れている。
建築部門
入賞
大海交流センター |
金沢計画研究所 |
水野 一郎 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
外観が個性的で、交流センターとして構造材と内装材に地域木材をふんだんに見せている。
木造建築・構築物部門
入賞
加子ふれあいコミュニティセンター |
安藤忠雄建築研究所 |
安藤 忠雄 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
地域材を活用しており、V字型のトラスに組んだ柱は新しい提案として評価をされた。
都城聖ドミニコ学園幼稚園 |
株式会社総合企画設計いわい |
岩井 秀一郎 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
国産乾燥スギをトラスエ法により八角形の空間を実現している。木造教室の明るさとやわらかさが評価された。
中国木材名古屋事業所 |
福島 加津也+富永祥子建榮設計事務所 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
米松乾燥材・集成材の特徴を利用して大空問を造っており、吊り屋根の曲面も美しい。
アイディア賞
ARK after a BOX |
三井所研究室 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
解体を前提とした屋台施設である。シンプルなBOXの積層による壁面が評価された。
エクステリア部門
入賞
森の小径 |
(有)平倉直子建築設計事務所 |
平倉 直子 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
自然環境と用途に応じて木材の材種を使い分け、集成材、無垢材を適所へ活用している。
森林管理小屋 |
ハラダデザインアトリエ |
原川 智章 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
ユニークなデザインでスギ間伐材のブロックを通しボルトで締めた壁柱的組積造が評価をされた。
インテリア部門
入賞
井深記念塾 |
オークヴィレッジ木造建築研究所 |
上野 英二 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
小径目を利用した大空間の技術と、木材の色彩を引き立たせる採光が評価された。
四季俵屋 |
ローバー都市建築事務所 |
野村 正樹 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
古小屋の改装に、既存の木材をなるべく残し、交換材に柿渋を塗布をしたりして古家の良さを表している。
奨励賞
三叉展示台 |
鉄矢悦朗建築事務所 |
鉄矢 悦朗 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
自立型の展示壁である。視界性の良さと、手軽に組立てられる利便性が評価された。
新しい加工技術部門
入賞
鶴峰東コミュニテイセンター |
サウルス建榮設計事務所 |
宇野 博徳 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
ボックス梁を用いた加工材の利点を活用しており、モダンなデザインと今後の可能性が伺える。
大山プレカット協業組合 工場棟 |
株式会社平設計 |
足立 牧平 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
無垢材による大型建築物である。無垢材では前例が少なく大型建築物の新たな技術の可能性が伺える。
奨励賞
ラージフィンガージョイント |
(株)綜合企画 |
杉山 次郎 |
<詳細資料> |
<作品コメント>
ヨーロッパのジョイントエ法を専用設備で構築をしており、大規模木質建築の更なる可能性が評価された。
第8回木材活用コンクール審査会を終えて
平成16年度日本木青連「第8回木材活用コンクール」におきまして、本年度は90作品の応募を頂きました。誠に有難うございました。昨年度の103点には及びませんでしたが、作品の内容では、審査員の方々から質的に点い作品が多かったとのコメントを頂きました。審査会では、時間を掛け、慎重審議の内に終わりました事をご報告致します。
木造建築におきまして住宅は勿論、非建築物の木材利用が積極的に取り入れられてきております。「木」の持つ温もり、やさしさを景観や地球環境にも配慮して、安全で安心できる木材をエンドユーザーヘ提供することが私たち木材業界の使命であります。その為には、建築設計士と木材業界の繋がりをより一居深め、提携してゆくことが「新しい住環境」創りに不可欠だということを今回の審査会で痛感をしました。
最後に、ご協力を頂きました設計士の方々、審査員の先生方、会員の皆様方には深く御礼を申し上げますとともに、今後とも木材活用コンクールをよろしくお願い申し上げます。
平成16年度日本木材青壮年団体連合会
木材活用委員会 委員長 木脇 章太郎