第9回木材活用コンクール(平成17年度)

応募総数 72
第1部門 木造建築・構造物 30 42%
第2部門 住宅 23 32%
第3部門 エクステリア 3 4%
第4部門 インテリア 11 15%
第5部門 木材加工技術 5 7%

審査委員会

審査講評

 このコンクールは木材の新しい使い方を見出して、それに光を当て広く木材業界の発展に寄与することを目的として実施したもので、本年で10年の節目を迎えた。創設以来毎年100件を前後する応募があり、年を追うごとに技術的レベルの向上を確認できたことは、審査する者にとって嬉しいことであった。またこの場で紹された技術が少しずつではあるが実際の場に応用されていくのを見て、会員の各位がコンクー実施の意義を知り、屑勇気を出すきっかけとなったのも有意義なことであった。
 本年の応募件数はやや少なかったが、質的には決して低下するものではなく、それぞれに負重なヒントを持つものが多かったというのが審査委員の共通の印象であったコンクールの実施を担される委員の方々は、ご苦労は多いが今後ともさらに努力してこれまでの成果を一層発展させていただくことをお願いしたいと思う

審査委員長
小原 二郎

審査員

(敬称略)
[審査委員長]

小原 二郎
千葉工業大学・常任理事

[審査委員]

岡 勝男
(財)日本住宅・木材技術センター理事長

有馬 孝禮
宮崎県木材利用技術センター所長

黒川 哲郎
東京芸術大学美術学部建築科・教授

征矢 隆
木構造振興株式会社・取締役

栗山 正也
KDアトリエ所長

加藤 昌之
株式会社加藤設計・代表取締役

松井 郁夫
有限会社松井郁夫建築設計事務所・代表取締役

日當 和孝
日本木材青壮年団体連合会・会長

木脇 章太郎
日本木青連木材活用コンクール委員会・委員長

最優秀賞

林野庁長官賞

no09_01
所沢市民体育館
(株)坂倉建築研究所
東泰規 萬代恭博 大森祥司 O.R.S事務所 依田定和
<詳細資料>所沢市民体育館

<作品講評>
この作品は、所沢市に建つ市民体育館で国際大会の開催から、市民の利用まで幅広い利用を考慮して設計された建物である。豊かな緑に囲まれた立地に合うように屋根架構は木造にして、地元産のスギを使う計画を立てた着想は秀逸であった。施工に当たっては、接着剤を用いす有害なVOCが発生しないように考慮した、その他の構成材についても空気汚染に注意を払ったこと、およびリサイクル材の使用や雨水の利用、太陽光発電など細部に至るまでこまかな配慮をして完成させた技術を高く評価した。

優秀賞

(財)日本住宅・木材技術センター理事長賞

no09_02
松茂町第二体育館
無有建築工房
 竹原義二
<詳細資料>松茂町第二体育館

<作品講評>
本作品は、徳鳥県旧吉野川河口に広がる松茂町に位置し、主として武道場として使われるアリーナ棟である。設計者は、フラットな周辺環境の地勢を強調する二段の水平な軒のラインを形作ることを意識して、スギ型枠RC打放しの柱を立ち上げ、木造の立体トラスからなる上屋と鉄骨造の深い軒をもつ下屋を架けたと言う。17mスパンの木造立体トラスは、地域材(ヒノキ無垢材)を積極的に活用し、部材寸法は一般に入手できる製材寸法を用い地元大工によりスパンごとに地組みしてRCの梁に架け渡し、木材の集積による架構の美しさを表現している。南面に立つヒノキの大断面構造用集成材の列柱(方立)は、構造用集成材にすることで精度と性能を確保すると共に大断面ならでの力強さが外回廊にリズムを生み出している。特徴を一口で表現すれば、① ヒノキ無垢材を使用した内観の美しい立体トラス構造であると共に②外観は方立を大断面材にして木質感のある美しさを表わし③これまで鉄骨で考えられていた体育館の架構への木材活用範囲を拡げた作品であるといえよう。以上の諸点を評価し優秀賞に推薦した。

全国木材組合連合会会長賞

柿林の家
九州大学大学院人間環境学研究院
 都市・建築学部門 教授 竹下輝和
<詳細資料>柿林の家

<作品講評>
この住宅は退職した学者が第2の人生のための‘‘終の棲み家"として設計した家である。柱も壁も屋根までもすべて間伐材を利用している。その総数は約1,500本という、構法は独自のシステムパネルエ法で、内装、外装とも効率化され、市場性にも十分に対応できるという。九州地方の高温多湿の気象に適した家でデザイン的にも木の持つ魅力を最大限に生かすよう工夫されている。新しい木材利用法の提案の一つとして評価したい。

日本木材青壮年団体連合会会長賞

no09_04
健生園
オークウッドヴィレッジ木造建築研究所
上野英二
<詳細資料>健生園

<作品講評>
この作品は、千葉県鴨川市の海岸近くの丘陸に建つ平屋の宿泊棟と2階建の研修棟から成る施設建物である。「百年かかって育った木は百年使えるものにしたい」という施主と設計者の共通の理念から生まれた建築といってよかろう。その特徴はスギ材を使った「板倉構法」にあり、40mmや30mmの原板を使って構成されている。周囲の自然に溶けこんだデザインも、循環型社会を目指すこれからの建物のあり方への提案として評価したい。

 

第9回木材活用コンクール審査会を終えて

 平成17年度第9回木材活用コンクを執り行う事ができまして、審査委員の方々をはじめ会員並びに関位のみなさまには厚く御礼を申し上げます。去る平成183月12日(日)に東京都にて木材活用コンクール審査会を行いました。
 本年度は、応募数が72作品でありましたが、昨年度と様に技術的なレベルの高いものが多く、年々コンクールに重みを増してきていることを実感いたしました10名の審査委員と日本木青連会員とで約6時間に及ぶ審査結果、18作品の入選が決まりました。入選から漏れた作品におきましても、殆どの作品が最終審査まで残り、選考までに時間が掛かった素睛らしいものでありま
 今後とも木材活用コンクルを継続するにあたり、みなさまのご理解とご協力を頂き、さらに発展しますようよろしくお願い申し上げます

平成17年度日本木材青壮年団体連合会
木材活用委員会 委員長 木脇 章太郎