木材活用コンクールの狙いは、誰もが参考にできる「木の良さを活かした作品」を選び出すことにあります。また、選び出された作品が手本となり、木材の新しい用途の普及と木材の利用拡大に貢献するという効果・効用を重視しています。今回は、昨年と比べて応募総数が下回った事については残念でしたが、意欲的に木材が活用された作品や、特殊で面白さを感じる作品も目立ち、コンクールの趣旨に合致した優秀な作品を選び出すことができました。
 第1部門に該当する、木造及び混構造建築物と第2部門の木質空間では、木造(木質)で大空間を実現した、従来の感覚にとらわれない斬新な設計がなされた作品が印象に残りました。また、間伐材や端材を上手く活用することを目指してデザインされた作品や、街づくりの一環として景観を木質に改修するといった、木材の普及に貢献する作品もありました。最優秀賞を始め、受賞作品はこの2つの部門から多く選出されました。
 第3部門の一般住宅では、今年の作品には、全体的にはあまり目新しさはありませんでしたが、中には、一見、住宅には見えない面白さや不思議さを感じる作品も応募されており、住宅の新しいカタチを見る事ができました。また、地産地消に取り組む作品も、多数の応募がありました。
 第4部門のランドスケープ・インスタレーションと第5部門の木製品は、応募数が少なく残念でしたが、地域材を都市部で積極的に活用する取り組みや、発想がユニークなマーケットに合った作品もあり、これからの木材普及の可能性を感じました。
 5部門全体の中から、厳選な審査の結果、農林水産大臣賞を始め18作品を入賞作品としました。今回も、木材活用コンクールらしさが発揮された作品を選び出すことができたと感じでおります。今後、この受賞作品を広く発信することが木材需要の拡大に繋がる事を願い、また、更なる当コンクールの発展を期待しております。

審査委員長
深尾 精一

審査員

(敬称略)
[審査委員長]

深尾 精一
首都大学東京 都市環境学部 建築都市コース 教授

[審査委員]

有馬 孝禮
東京大学 名誉教授

岸 純夫
(財)日本住宅技術セ理事長

黒川 哲郎
東京藝術大学大学 美術学部 建築科 教授

中川 誠一
(一社)日本インテリアプランナー協会 顧問
株式会社ネクスト・エム 代表取締役

松井 郁夫
株式会社松井郁夫建築設計事務所 代表取締役

加藤 昌之
株式会社加藤設計 代表取締役

村口 峽子
インテリアデザイナー・駒沢女子大学 空間造形学科 教授

吉田 良弘
日本木材青壮年団体連合会 会長

髙瀬 秀樹
日本木材青壮年団体連合会 木材活用委員会 委員長

最優秀賞

農林水産大臣賞

1380866050
 筑紫保育園 分園
内田 貴久
内田貴久建築設計事務所
 <詳細資料> 筑紫保育園 分園

<作品講評>
木造のトラス梁によって構成した折板状の屋根によって、9mスパンの無柱空間を実現している。大規模構造物でありながら、分節化された空間の造り方が巧みであり、将来の様々な状況変化にも対応も可能である。また、内装の木質化によって、柔らかさや温かさを感じる保育園となっている。

優秀賞

林野庁長官賞

1380866223
 尾鷲市立 尾鷲小学校
 伊藤 恭行、佐々木 司
 株式会社 シーラカンスアンドアソシエイツ/Can
<詳細資料> 尾鷲市立 尾鷲小学校

<作品講評>
細い柱の鉄骨造に地域材である尾鷲ヒノキを活用し、木質空間を巧みに創りあげている。木材活用の見本になる作品と言える。地域の森林組合などと一体となった木材活用の取組みは、これからの活動に期待と希望が持てる。また、光の取り入れ方や、鉄骨柱とログによる壁の組み合わせも効果的である。

(公財)日本住宅・木材技術センター理事長賞

1380866625
 宮田村こうめ保育園+東保育園改修
 須永 次郎、須永 理葉、吉岡 寛之、浜田 充
 暮らしと建築社+iroirotoridori
 <詳細資料>宮田村こうめ保育園+東保育園改修

<作品講評>
小断面の部材による木造格子梁を用いて、軽い屋根構造の無柱空間を実現している。ヒノキの需要低迷の中で活用が望まれているヒノキ合板がバランスよく使用されおり、意欲的な木材活用と言える。温かみのある美しい空間が実現された作品である。

(一社)全国木材組合連合会会長賞

1380866482
 富岡八幡宮 仮設観覧所・休憩所
 水野 吉樹、秋山 裕子
 株式会社 竹中工務店
<詳細資料>富岡八幡宮 仮設観覧所・休憩所

<作品講評>
例大祭の期間だけに用いるために建てられた、仮設の木造御観覧所を再利用した作品である。木材の特徴を活かすことによってこそ可能となった特殊な事例として評価された。関係者の記憶や想いが、この休憩場に今もなお残されている。

(一社)日本インテリアプランナー協会賞

1380866854
 アワーズイン阪急 OURS IN HANKYU
 西尾 敏靖、鈴木 雅子、高橋 真悟
 株式会社 240design studio
 <詳細資料>アワーズイン阪急 OURS IN HANKYU

<作品講評>
ホテルのパブリックスペースで、ここまで木材を使用した例はみられない。壁・床材などに、環境に配慮された計画伐採による集成材や間伐材、耳付き・皮付きの端材等を利用している。緑も取り入れ自然素材を大切にして作られた空間が評価された。

日本木材青壮年団体連合会会長賞 「ブレイクスルー賞」

1380866862
 バウンダリー・ハウス
 山下 保博、名和 研二
 構造設計室なわけんジム一級建築士事務所 株式会社 アトリエ・天工人
 <詳細資料>バウンダリー・ハウス

<作品講評>
特殊な敷地条件の中で、「自然と建築の境界の曖昧さ」を目指した、まさにブレイクスルーな作品である。構造材としての木材の活用の仕方も斬新であり、意欲的な構法開発がなされている。まるで迷路のような平面構成の設計は、豊かな発想を実現しており面白い。

部門賞

第1部門賞

1380867479
 美濃保育園 子育て支援棟
 二宮 郁代
 株式会社 象設計集団
 <詳細資料>美濃保育園 子育て支援棟

<作品講評>
枝の付いた自然丸太の柱が建物を支えており、森の様な内部空間を表現した屋根架構の斬新な作品である。地域の技術・材料を活かし、子供達が木を身近に感じながら生活できる空間となっている。

第2部門賞

1380867479-1
 ゆいま~る那須
 瀬戸 健似、近藤 創順
 株式会社 プラスニューオフィス
 <詳細資料>ゆいま~る那須

<作品講評>
有機的な配置によって豊な外部空間を生み出しているコミュニティー形成の面白さが評価された。構造材、床材、外装材などには、地場の杉材を無垢のまま使用し、木の優しさが溢れる場所となっている。

第3部門賞

1380867140
 百済寺の家
 関谷 昌人
 PLANET Creations 関谷昌人建築設計アトリエ
 <詳細資料>百済寺の家

<作品講評>
一見、住宅に見えないような斬新な建築であるが、敷地形状を上手く利用し、雨水利用と環境との調和を目指した設計が評価された。建物内にも外部空間を巧みに取り入れている。

第4部門賞

1380867146
 錦二丁目ストリート・ウッドデッキ
 都市の木質化プロジェクト
 <詳細資料>錦二丁目ストリート・ウッドデッキ

<作品講評>
県産材の積極的な活用方法として、都市部の公共空間などにウッドデッキを設置し、木質化を推進している取組みが評価された。街の中での木質空間は、人々の憩いの場として活用されるであろう。

第5部門賞

1380867238
 記憶の波紋 -伐採木利用家具による地歴の継承-
 土屋 潔、大庭 拓也
 株式会社日建設計
 <詳細資料>記憶の波紋 -伐採木利用家具による地歴の継承-

<作品講評>
外来生物という理由があって伐採された敷地内の樹木を、家具として利用した作品。木口を組合せた座面は、年輪が水の波紋のように広がり、木の温かさや学園の記憶が表現されている。

震災復興特別賞

1380867590
 名取市図書館 どんぐり子ども図書
 杉本 洋文
 株式会社 計画・環境建築

 

木育活動特別賞

1380867759
 ぐるりん
 Design Build Fukuoka
 FUCA

 

木質修景特別賞

1380867680
 伊香保温泉石段街 街並み景観デザイン改修
 みぞぶち かずま、根来 直生、柳原 まどか
 オデッセイ オブ イスカ

 

木材デザイン特別賞

1380867747
 JAISTギャラリー
 松田 達、林野 紀子
 松田達建築設計事務所+りんの設計一級建築士事務所

 

木材活用特別賞

1380867831
 恵庭市黄金ふれあいセンター
 北海道大学大学院工学研究院
 北海道大学大学院工学研究院
 株式会社 渡辺建築設計

 

1380867843
 DKB48
 川添 英司、持永 直樹、臼井 省司
 Team Home-Ran

 

1380867925
 北海道北斗市の家 地産地消の唐松集成材軸組住宅
 高田 傑
 高田傑建築都市研究室

 

第16回木材活用コンクール あいさつ

 「木材活用コンクール」は、木材の新しい用途の普及と木材の利用拡大を目的として創設され、今回で16回目を迎えます。今回も木材を積極的に活用された大規模建築物から一般住宅、また、木製品を5部門に分けて募集し、82作品の応募を頂きました。前年度からは大幅に応募数を減らしてしまいましたが、それでも全国の皆様から、コンクールの趣旨に賛同して頂き、木の良さが活かされた作品を多数応募して頂いた事に本当に感謝しております。その中から審査の結果、農林水産大臣賞を始め18作品の受賞作品を選出しました。これらの作品を今後、広く発信する事でより多くの皆様に木の良さを伝える事ができればと思っております。
 また、H24年度「第16回木材活用コンクール」を開催する際には、後援・協賛各種団体・企業の皆様、審査委員各位、そして木青連会員の皆様には多大なるご支援、ご協力を賜りました。心より感謝申し上げます。そして、全国からの応募者の皆様からはコンクールへの期待の声を多く頂きました。森林の再生、木材業界の発展を願い、大切な木材資源を有効利用された作品と取り組みを発信する機会を提供する事は、これからも「木材活用コンクール」の役目であると強く思いました。
 最後に、私自身も歴史ある日本木青連の代表的な事業である、「木材活用コンクール」の担当委員長を務め、日々の業務の中、本当に貴重な経験をさせて頂きました。全国の多くの方々と出会い、共に活動できた事に、改めて感謝申し上げまして挨拶とさせて頂きます。

平成24年度日本木材青壮年団体連合会
木材活用委員会 委員長 髙瀬 秀樹