目次
第11回木材活用コンクール(平成19年度)
応募総数 | 160 | ||
第1部門 | 木造建築・構造物 | 30 | 19% |
第2部門 | 住宅 | 86 | 54% |
第3部門 | エクステリア | 9 | 6% |
第4部門 | インテリア | 32 | 20% |
第5部門 | 木材加工技術 | 3 | 2% |
審査委員会
審査講評
最近は、自然素材の良さが見直されるようになって来た。20世紀は機械文明の時代であったが、21世紀は生物文明の時代に向いつつある、という説があるが、一般の人たちの間にも、そうした考え方が普及してきたのであろう。自然材料を代表するものの1つは木材であるから、上記の流れをいっそう増大させて、木材産業の発展に結びつけることを狙いとして、このコンクールは発足したのであった。以来10年の歳月を経て、ようやく基盤が固まったと実感できたのが、今回の催しであった。
応募件数は160件に達し、内容的にも充実した作品が多く見られた。この成果は木青連の担当委員の永年に渡る努力によるもので、審査委員としても満足した次第である。こうした催しの応募は、普通には大都市からのものが多いが、今年は北海道、大分、愛媛、埼玉、山形などからも、応募が多くあったのは嬉しいことであった。
審査会は、終日をかけて慎重にに審査し17点を入賞作品として選んだ。内容として大きな意義を持っているが、このコンクールの主旨として推薦し難いものには特別賞を授与し、また、よく努力したと認められるものには、審査委員賞を贈ることにした。いずれにしても、回を重ねるごとに作品のレベルが上がってきたことは、審査委員の等しく認めるところである。
尚、毎年のことながら、エクステリアとインテリアの部門に応募が少ないことは残念であった。市場を見ると、かなり良い作品もあるようだし、またインテリアについてはリフォームの普及で良い作品も多くあるので、それらを応募するように担当委員会から勧めていただくことも希望したいと思う。このコンクールの一層の発展を期待して、総評の結びの言葉とする。
審査委員長
小原 二郎
審査員
岸 純夫
東京藝術大学美術学部建築科 教授
深尾 精一
首都大学東京 都市環境学部 建築都市コース 教授
松井 郁夫
株式会社松井郁夫建築設計事務所 代表取締役
最優秀賞
林野庁長官賞
南方熊楠顕彰館 |
矢田 康順 (株)インテグレ―ティド デザイン アソシエイツ |
<詳細資料>南方熊楠顕彰館 |
<作品講評>
この作品は和歌山県出身の世界的博物学者、南方熊楠の研究資料を保存し、その偉業を伝えることを目的として建設されたもので、設計は公開のコンペによって選ばれている。
その特徴を記載すると下記のようである。
(1)建物は周囲の町並みに溶け込むように、大小の切妻屋根の連続した形態になっている。
(2)構造材、仕上げ材ともに集成材を用いないで、丸太などを使い、地元材の良さを表現するように工夫されている。
(3)伝統的な方法である貫壁を基礎とした格子状の耐力壁で構成されている。現代技術の応用によって、視覚的にも意匠的にも優れた空間づくりに成功している。
(4)木材の収縮に対しては、楔の追い締めで対応するように工夫し、それを地元市民の記念行事にしようという発想は秀逸である。
上記の理由により、最優秀賞として推薦した。
優秀賞
(財)日本住宅・木材技術センター理事長賞
静かな家 |
藤田 克則 (株)設計工房 禺 |
<詳細資料>静かな家 |
<作品講評>
現在新築される住宅の多くは、構造的には木造でありながら、木材は隠蔽されて多国籍風の外観となっている。今回応募住宅の題名に「静かな家」という題名をつけた理由は、本来の木造住宅の姿に基盤を置いて、その傷みが目に見え、長寿住宅の対策が取りやすい、というところに重点を置いたからであった。
その特徴を記載すると下記のようである。
(1)よけいな装飾のないシンプルな佇まい。
(2)梁や桁などの構造材のほとんどは、杉の4寸角材だけで構成されている。
(3)図面上で架構と間取りの整合性が読み取れること。
(4)建具と室内空間の調和が美しいこと。
(5)ローコスト住宅にも応用できる技術を提案したこと。
等である。
以上が、優秀賞として推薦した理由である。
全国木材組合連合会会長賞
杉の家 |
佐藤 大 KD設計一級建築士事務所 |
<詳細資料>杉の家 |
<作品講評>
施主は「日本の民家」「数奇屋風」に通ずる嗜好を持つ人であった。住宅展示場を見て回ったが、しっくり来ない、ということで、設計者との交流が始まったという。「人間が老いていくように、家も歳月の経過をかもし出す姿と向き合いたい」という考えが基本になっている。広い土間やテラス、リビングにある薪ストーブ、シンプルな間取りや外見など、施主の住まいに対する思いやりやそのライフスタイルが、手に取るように判り、設計者と施主の良好な関係が想像できる。住まい創りがどうあるべきか、を再考させられる作品であることと、住宅としてのバランスの良さから、優秀賞に推薦した。
日本木材青壮年団体連合会会長賞
<作品講評>
どんな空間にもどんな形にも柔らかく対応できるようなオブジェを求め、たどり着いた答えが、単一で単純な形の木材の板であった。
この部材は簡単に持ち運べるし、施行には道具を必要としない。また、釘などを使わないから、繰り返して使うことが可能である。
応募パネルに示したのは、大学のキャンパス内に学生の憩いの空間として設置したものである。1年後には壊されるが、また形を変えて組み立てられるよう、発想を変えれば広い用途に応用できる着想の面白さを評価した。
部門賞
木造建築物・構造部門
四季の森デンタルクリニック |
若原 一貴 一級建築士事務所 (株)若原アトリエ |
長坂 健太郎 (株)長坂設計工舎 |
<詳細資料>四季の森デンタルクリニック |
八ヶ岳の教会 木々と自然がもたらす変容する空間 |
太田 隆司 戸田建設(株)一級建築士事務所 |
<詳細資料>八ヶ岳の教会 木々と自然がもたらす変容する空間 |
木造住宅部門
京都まちなかこだわり住宅 |
池井 健 魚谷 繁礼 正岡 みわ子 現代京都都市型住居研究会 |
<詳細資料>京都まちなかこだわり住宅 |
上品寺町の家 |
関谷 昌人 PLANETCreations 関谷昌人建築設計アトリエ |
<詳細資料>上品寺町の家 |
流・Ru |
彦根 アンドレア (株)彦根建築設計事務所 |
<詳細資料>流・Ru 彦根 アンドレア |
日本木材防腐工業組合理事長賞
宮崎高千穂通り T-テラス |
吉武 哲信 高千穂通りを愉しくする会 |
<詳細資料>宮崎 高千穂通り T-テラス |
インテリア・リフォーム部門
八多の家 |
村上 隆行 eu建築設計 |
<詳細資料>八多の家 |
特別賞
三重県立熊野古道センター |
三重県政策部東紀州対策局 |
三重県庁 |
太陽の郷 リハビリテーション研究室 |
井上 雅雄 (株)竹中工務店 |
佐川美術館 樂吉左衞門館 |
内海 慎介 (株)竹中工務店 設計部設計3部門3グループ |
審査員賞
北本の家 |
増田 啓介・良子 増田アトリエ |
木造ドミノ住宅 |
半田 雅俊 半田雅俊設計事務所 |
(株)木造ドミノ研究会 |
努力賞
名古屋城 資源回収箱用木製枠 |
上地 浩之 |
名古屋木材青壮年会 |
第11回木材活用コンクール審査会を終えて
平成19年度、第11回木材活用コンクールを、無事、執り行うことができ、小原二郎審査委員長をはじめ審査委員の先生方、会員の皆様、また、関係各位には厚くお礼を申し上げます。
今年度は160点のレベルの高い作品の応募があり、3月16日に開催された審査会においては、一次審査で約30作品が選ばれ、さらに時間を延長しての最終審査の結果、17作品の入選が決まりました。
第38代木青連会長の鈴木龍一郎先輩と、初代木材活用委貝長の加藤昌之氏のご尽力で立ち上がった当コンクールは、第一回よりの審査委員長小原二郎先生のお導きと、関係各位のご協力により、10年来の試行錯誤を経てやっと基盤が固まってきた観があり、当年度委貝長として、ここまでに至る先生方の努力に敬意を払わずには居られません。
一方、年度当初に、審査委員長よりインテリア・エクステリア等の作品を積極的に集めることが、コンクールの一層の発展につながる、とお話しを頂いていたにもかかわらず、それらのカテゴリーの作品を十分に集められなかったことにおいて、単に私のカ不足であったことを、深く反省しております。
今後とも、木材活用コンクールを発展的に継続するに当たり、皆様のご理解とご協力を頂きますよう、よろしくお願いいたします。
平成19年度日本木材青壮年団体連合会
木材活用委員会 委員長 江口 達郎